卒業生インタビューvol.25

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菅井円加さん

バレエダンサーの登竜門として知られるローザンヌ国際バレエコンクールで日本の高校生が優勝!……新春2月、スイスからのビッグニュースでした。その高校生が、なんと我が和光高校の2年生(現3年生)・菅井円加さんでした。 菅井さんの受賞は個人の精進の結果であり、学校の手柄ではまったくありませんが、彼女の精進について私は興味津々でした。菅井さんがどのような精進を重ねたのかを聞き取り、そこから和光の生徒たち……クラブ活動に励んでいる者、菅井さんのように学校の外で芸事に励んでいる者……が参考にできることがあるのではないか、と考えたからです。

夏休みの1日、菅井さんに対する私・両角の「特別授業」という形で、たっぷり聞き取りを行いました。

聞き手:和光中学高等学校長 両角憲二  

ローザンヌ国際バレエコンクール

両角:ローザンヌから帰国して、おかあさんと一緒にあいさつに来てくれたのが2月8日でしたね?

菅井:はい。

両角:あのときもいろいろ聞きましたが、まず、ローザンヌ国際バレエコンクールについて教えてください。今回が第40回ということでしたが、「登竜門」と呼ばれるのは出場資格に年齢制限があるからですね。

菅井:そうです。15歳から18歳までのダンサーが対象のコンクールです。

両角:ということは最大4回出場できるということですか?

菅井:2回までは出場できますが、1回目に10以内に入賞すると次のコンクールには出場できません。入賞者に1年間のバレエ留学という副賞がつくからだと思います。

両角:菅井さんは今回が初めての出場でしたか?

菅井:はい。

両角:どのような順を追って選ばれていったのですか?

菅井:今回のコンクールには30カ国から226人が応募したと聞きました。ローザンヌでのレッスン審査に呼ばれたのは19カ国の79人でした。そして、最終審査に残ったのが21人でした。

両角:各国の予選コンクールを勝ち抜いた代表1名がローザンヌに出場するわけではないのですね?

菅井:このコンクールに向けて録画したビデオ映像での応募です。それが審査されて、レッスン審査に呼ばれるわけです。

両角:レッスン審査の様子がNHK教育テレビで放送されていましたね。

菅井:はい、グループに分かれてのレッスンを受けました。その時点での技量や表現力を審査されるだけでなく、新しいことを教えられたときの吸収力やダンサーとしての可能性、将来性を見極めるのだと説明されました。最初は緊張しましたが、でも、レッスンはとてもフレンドリーな雰囲気で楽しかったです。

両角:そして、ステージでの最終選考。21人の中に日本人が5人いたのですね。全国的なコンクールで見知った人ばかりでしたか?

菅井:名前を知っている人はいましたが、アメリカやポルトガルといった留学先からの出場でした。でも、やはり心強かったですし、留学先の国のバレエのことなども聞けて楽しかったです。

両角:菅井さんの口からは「楽しかった」が多いですね。最終選考のステージも楽しかったですか?

菅井:いいえ、私はあがり症なので、ズシンとプレッシャーを感じました。

両角:えっ、あがり症なの?

菅井:はい、そうですよ。それに日本人は外国人と比べて骨格、手足の長さなどでダイナミックさの表現では不利で、踊りのセンス、楽しそうに踊る表現力もオープンな外国の人の方がすぐれていると聞いていましたし、実際に外国の人の踊りを見てそのことを実感しましたから、なおさら緊張しました。ステージに出て行く前は「どうしよう」っていうくらいあがっていました。

両角:それでもいったん舞台に出れば、パッとバレエの世界に入れるわけですね?

菅井:そうですね。あれこれ考えながら踊るのではなく、音楽に身を任せてしまう感じです。

両角:その結果が世界的に活躍の吉田都さん、熊川哲也さん以来の日本人の優勝ということですね。しかも、クラシック部門、コンテンポラリー(現代舞踊)部門とも、9人の審査委員全員が菅井さん1位の採点。両部門1位は過去に数例あるのみで、女性では初めてとのことですね。

菅井:今でも信じられない気持ちがあります。

両角:審査発表のとき「スガイ・マドカ」と呼ばれて、「えっ、私?」といった感じの一瞬の間がありましたよね?

菅井:ほんとうにそうでした。「えっ、本当に私?」「私でいいの?」っていう感じで、頭の中が真っ白になりました。

3歳からバレエを始めて

両角:それでは、そこに至るまでのことを聞きたいと思います。まず、どのようにバレエを始めたのですか?、

菅井:姉が習っていたバレエ教室についていったり、発表会を見て、「私も習いたい」と言ったそうです。3歳から始めました。

両角:あとはバレエ一筋、バレエ一直線でしたか?

菅井:いいえ、そういうわけではありません。

両角:途中でやめたいと思ったことはありますか?

菅井:あります。中学生の時に何度かありました。

両角:小学生のときは?

菅井:小学生のときはなかったですね。踊りたくてしょうがないという感じでした。姉は中学入学前に「私にはバレエは向いてない」とやめたのですが、私は中学生になってからそういうことを考えました。でも、気がつくとループのようにバレエに戻っていました。やっぱり好きなんですよね。それと、姉は歌や腰を使うベリーダンスがとても上手なのですが、私にはそういうものがなかったので、「私にはバレエしかない」という気持ちもあったと思います。

両角:そういうときに、おとうさん、おかあさんは何か言いましたか?

菅井:いいえ、特に言われませんでした。母からよく言われたのは「あなたが好きで始めたことよ」ということでした。

両角:「だから、練習着は自分で洗いなさい」ということになるのですね。『アエラ』にそのことが載っていましたね。

菅井:そうですね。小学生のときからずっとそうでした。

両角:いわゆるステージママとは違いますね。でも、「あなたが好きで続けている限りは応援するわよ」と、応援は惜しまなかったわけですね?

菅井:はい。バレエダンサーの食事についてもずい分研究してくれました。それから教室からの帰りが遅くなるので、毎晩駅まで迎えに来てもらいました。

両角:夕食抜きで夜の10時過ぎまで稽古と聞いてびっくりしましたが、帰宅しても夕食はとらないと聞いて、さらにびっくりしました。よく体がもちますね?

菅井:バレエダンサーはみんなそうです。もう、そういう体になっているので、空腹感で苦しむということはありません。たまにストレスがたまって食べたくなる時もありますが、そういうときは「お菓子はダメ!」と無理に我慢するのではなく、まず、ごはんと野菜をきちんととるようにしています。

練習そしてコンクール

両角:練習はどのような内容なのですか?

菅井:最初の1時間半はストレッチです。次の1時間半が先生からのグループレッスンで、最後に個人練習を1時間半から2時間やります。もちろん、途中で休憩をとりますが……。外国のダンサーに聞くと、もっと短時間の練習のようです。

両角:最初から最後まで先生に仕込まれるという練習ではないのですね?

菅井:そうです。個人練習は「ここはどう踊ったら良いのだろう」「どう表現したら良いのだろう」と考えては踊ってみるわけですから、ずっと踊りっぱなしではなく、むしろ考える時間の方が長いかもしれません。

両角:それを聞いてちょっと安心しました。

菅井:えっ?

両角:というのは、今日の菅井さんの話から「菅井さんはこういう練習をやっていたそうだよ」「コンクール(試合)にはこういう気持ちで臨んでいたそうだよ」と生徒に話す材料を仕入れるつもりなのね。でも、「一流になるには一流のコーチによる手取り足取りの長時間の指導と訓練が不可欠」ということだとすると、「和光のクラブはそんなに練習時間も日数もないですよ」で終わってしまうでしょ。それを心配していたわけ。

菅井:そうなんですか。

両角:私が校長になる前、中学の男子バスケ部の顧問だったって知ってる?

菅井:はい、知ってます。

両角:和光中学のクラブ活動時間は5時20分まで。日数は年間約100日。「時間は短くて、日数は極端に少ない。だから負けても当たり前」という口実が用意されていたから、負けても全然くやしがらない。それを変えたのが、朝、15分休み、昼休み、(クラブ活動のない日の)放課後の坂道ダッシュ=脚力づくりだったのです。菅井さんのストレッチ=バレエ向けの身体づくり⇒レッスン⇒個人練習を中学男バスに置き換えると、坂道ダッシュ⇒チーム練習⇒帰宅後の個人練習ということかなと思いました。

菅井:中学の男バスの子たちは本当によく走っていますよね。

両角:そうですね。それとビデオを活用してのイメージトレーニングでしたね。バスケ部顧問の時、私は負けた試合より勝った試合のビデオをよく見たけど、菅井さんはどう?

菅井:私は両方見ます。悪い時も「ここは悪いけど、ここは良い」と思う所もあるし、失敗を超えて次の舞台で出せるように、ビデオを繰り返し見て、自分のイメージを膨らませていくようにしています。良かった時は「どこが良かったから結果につながったのか?」と確かめながら見ます。

両角:私も選手には「良かったプレーは何度も見て定着させなさい」「失敗プレーは、こうすれば良かったというプレーに置き換えて何度もイメージしてごらん」と言ってきましたね。ビデオはおかあさんが撮ってくれるの?

菅井:コンクールの主催者が撮ってくれます。

両角:ところで菅井さんもこれまでのコンクールで常に優勝というわけではなかったよね。優勝しないとうんとくやしいと思う方?

菅井:コンクールに出ることについて先生からいつも言われているのは、「コンクールは賞目当てに出るのではなく、今後のために、舞台に慣れておくために出るもの。自分が練習してきたことをそのまま舞台で出せるよう、出場させてもらうもの。しっかり踊れて運が良ければ賞がついてくるかもしれないよ」です。確かにそうで、そういう気持ちでやってきて今回は賞がついてきたのかな、と思います。

常に進化を楽しむ

両角:菅井さんは『スラムダンク』を読んだことがないとのことでしたが、私はかなり熱心な読者です。その『スラムダンク』を材料にして慶応大学医学部の先生が書いた『スラムダンクの勝利学』という本があります。

菅井:えっ、医学部の先生ですか?

両角:そう、スポーツ医学とスポーツ心理学が専門の辻秀一という先生。その本の中で「勝つことだけを目標にしていると、勝ちが見えた時にプレーがゆるみ、往々にして逆転されて終わることがある」と書かれています。その例として辻先生がラジオの対談で語っていたのが、柔道の田村亮子。あれっ、今の名前はなんだっけ?

菅井:谷亮子さんですね。

両角:そうそう、谷亮子。彼女がバルセロナとアトランタと2度つづけてオリンピックで金メダルを獲れなかったのは、金メダルを意識しすぎたからだと言っていました。では何が大切か、どうすれば良かったのかというと、「常に進化を楽しむこと」だそうです。本にも書かれています。これは円加さんが言っていた「コンクールは賞目当てに出るのではない」「賞は後からついてくる」に通じるように思いますが、どうですか?

菅井:本当にそうですね。賞目当てだと賞をもらって満足してしまって、そこで終わりですよね。とにかく私は、前よりも大きく楽しく踊ることを心がけています。そこで得られる快感を知ってしまったら、クセになるんですよね。

両角:その「前よりも」「大きく楽しく」や「快感」「クセ」がまさに「常に進化を楽しむ」ということですね。

菅井:そういうことになりますかね?

両角:そうなりますよ。菅井さんは本当に優れた先生に習うことができて、その教えを素直に自分のものにできたのですね。そこが菅井さんの優れているところなのでしょうね。あと、和光祭ステージ部門にヒップホップ系のダンスチーム“さといもダンサーズ”のメンバーとして出場していたでしょう。バレエ教室の先生には隠していたの?禁止されなかった?

菅井:バレエに支障があるようなら、きっと先生は気がついて、注意してくれるだろうとは思っていました。

両角:ヒップホップとクラシックバレエ、かなり違うのでしょう?

菅井:全然違いますね。バレエは上に上に引き上げて表現しますが、ヒップホップは下に下にと体を動かしていきますし、首の動かし方も独特です。両方できたらかっこいいと思いました。

両角:菅井さんは男性がいない時は男性役もすすんでやるので、バレエ教室の先生から“アスリート円加”って言われているんですよね?

菅井:“円加選手”とも呼ばれています。

両角:そこが並外れているところなのでしょうね?

菅井:えっ、私って外れてるんですか?

両角:そう、ナミ外れてるんですよ。ヒップホップも男性役も楽しむ、その規格外のしなやかさが、日本人は苦手とされるコンテンポラリーでも最高点をとった原動力なのかもしれないね。規格外といえば、体育祭ではバレーボールにもサッカーにも出て、目いっぱいプレーしていましたよね?普通、クラシックバレエで世界をめざすダンサーって言ったら、そんな危ないことは避けるでしょ?「怪我したらどうするの?」と見ているこちらがヒヤヒヤするほどでしたよ。

菅井:えっ、でも、せっかく和光高校に入ったのだから、体育祭も楽しまなければもったいないじゃないですか?

菅井さんと和光高校

両角:そこも規格外ですね~。菅井さんに「こういう学校があるよ。円加に合ってると思うんだけど……」って和光高校を勧めてくれたのは、中学3年生のときの担任の先生でしたっけ?

菅井:そうです、渡辺先生です。それで入試説明会に来て、いっぺんに気に入りました。

両角:気に入ったのは、和光の自由、オープンていうところかな?

菅井:そうです、それもあると思います。他の高校と比べて、和光高校は雰囲気が違う気がしました。実際にとてもオープンです。生徒同士はもちろん、生徒と先生の間もオープンで仲がとても良く、先生同士もオープンな感じで、学校全体が活気に満ちています。それにいろいろな個性の人がいて、でも、お互いを認めあっているので、私自身、とても居心地がよかったです。そのおかげで、人と接することが楽しくなりました。

両角:ところで、音楽だったらまず楽譜にそって正確に演奏することが求められ、次に解釈・表現ということになると思うのですが、バレエには音楽の楽譜に当たるものがあるわけではないでしょ?

菅井:ありませんね。

両角:どうやって振りをつけていくの?

菅井:有名なダンサーの踊りをビデオで何度も見ますが、それをコピーして踊るわけではありません。一つ一つの曲の物語を把握して、この場面のこの人物はどういう気持ちだろうかと想像して表現します。今回の課題曲の一つ「ライモンダ」第一幕第二場「夢の場」(アレクサンドル・グラズノフ作曲)は、夢の中で愛する人の幻想を見るというものですが、遠く離れている人と夢の中で会えたらどういう気持ちだろう、と自分なりに考え想像して表現しました。先生からは「この振りはこうした方がキレイに見えるよ」などのアドバイスはしてもらいますが、自分の気持ちが大事で、自分のこだわりを表現していきます。

両角:曲を自分で解釈し、再創造していくわけですね?時代背景も把握するわけですね。おかあさんが「バレエだけでなく、本や映画、音楽にもはばひろく親しんでほしい」と言っていたのは、そういう意味ですね。「一つひとつの曲の物語を把握して、表現は自分の考え・気持ちが大事」とのことですが、「自分の意見を書かせる」「意見を交流する」ことの多い和光高校の授業は、多少いかされていますか?

菅井:とても活かされていると思います。周りの人の意見や考えを知ることで、自分自身の考えの幅がとても広くなりました。

両角:菅井さんは、和光高校2年生の選択講座『舞踊研究』を受けたかったんですよね?

菅井:それも和光高校を選んだひとつの理由でした。研究旅行でアイヌの踊りを習いたかったんですよ。それなのに受講希望者が多くて、抽選で落ちてしまいました。ほんとうに残念でした。

両角:『舞踊研究』担当の梅津先生も残念がっていましたよ。それで、第2希望の『郷土史研究』にまわったわけですね?

菅井:そうです。でも、『郷土史研究』も楽しかったです。

両角:担当の佐々木先生に菅井さんの研究旅行まとめノートを見せてもらいましたが、しっかりまとめていましたね。字も上手で感心しました。

菅井:ありがとうございます。

対戦相手が新しい力を引き出してくれる

両角:さて、今日は菅井さんに対する私の「特別授業」ということで登校させているわけですから、少しは先生らしいことも話さなければいけませんね。今後の円加さんのために、いくつか課題を提示できたら良いなと思っています。

菅井:よろしくお願いします。

両角:菅井さん、テレビ局のインタビューに答えて「これまで練習してきた成果しか出せない。それがそのまま出せたと思います」と言っていましたよね。

菅井:はい、言いました。

両角:その言葉、私は95%、あるいは97%真理だと思うのね。でも、残り5%、3%があると思っているんです。私は中学男バス顧問時代に、その残り5%、3%を「試合相手が君達の普段以上の力を引き出してくれるかも知れないよ」としつこく言ってきました。つまり、「進化を楽しむ」のバリエーションです。スピードも高さも明らかに格上の相手と対戦するとき、勝つことだけを目標にしていたら、試合が始まってものの4、5分で「これはとても勝てそうにない」で勝負は決してしまいます。そうではなくて、「相手のスピードと高さに必死に食らいついていったら、相手が自分たちの新しい力を引き出してくれるかもしれない」だったら、試合の最後の最後まで全力を尽くせると思うわけね。それを言い続けて、選手もその気になって、その結果、9年前に都大会で優勝。

菅井:それはすごいですね。

両角:勝ち負けを争うバスケの試合と美や表現力を競うバレエのコンクールでは本質的に違うだろうけれど、でも、今回ローザンヌという舞台と世界から集まったダンサーたちが菅井円加の新しい力を引き出してくれたという面もあるのではないですか?

菅井:そうですね、それはありましたね。普段と違う人たちとレッスン審査とコンクールを受ける中で、共に学び、吸収することが確かにありました。

両角:これから菅井さんは、吉田都さんや熊川哲也さんとなにかと比較されることでしょうね。でも、菅井円加は菅井円加で、吉田都さんでも熊川哲也さんでもないということを忘れないでほしいですね。その上で、比較されることから生ずるプレッシャーをストレスにしてためこむのではなく、「もしかしたら、このプレッシャーが新しい菅井円加を引き出してくれるかもしれない」と考えられるようになってほしいと思います。

菅井:いつも、より大きく、より楽しく、進化を楽しむようにします。

両角:そうですね。

一人称で観る

両角:次にビデオを一人称で観ることに挑戦してほしいということです。

菅井:一人称、ですか?

両角:先日、NHKテレビの『ミラクルボディー』という特集番組で体操の内村航平選手の強さを分析していました。見ました?

菅井:いいえ、見ていません。

両角:内村選手は憧れの選手の演技ビデオを「一人称で観ることができる」というのです。えっ、どういうこと?って思いましたが、つまり、その選手になりきってその選手が見ている風景、床や天井や観客席を見ることができるということらしいです。

菅井:それってすごいですよね。あの何回も回転したりひねったりする演技を観ながらですか?私は舞台に立っている自分を想像することはできますが……。

両角:私は男バスの生徒に全中(全国中学生大会)やインターハイ、ウィンターカップのビデオを繰り返し見せてきました。最初は試合開始から最後までを通して見せます。途中で「えっ」や「すげえ」の声がかかるけど、それって観客としてゲームを楽しんでいるわけで、ボールを追った観方になります。これが三人称の観方なのでしょうね。 次に「自分はこのタイプのプレーヤー」「自分はこのポジション」「自分はこういうプレーヤーになりたい」と目標とする選手を決めさせて、その選手の一部始終を観るようにさせました。ボールのないところでその選手がどのように動いているのかもしっかり観るように言います。 次にその選手のナイスプレーの場面をくりかえし観て、さらにスローモーションで観ながらその動きを小さな動作でいいから真似してごらん、と言ってきました。その選手から1対1のレッスンを受けていると考えると、これが二人称で観ると言えるのかな? 菅井さんが『くるみ割り人形』『白鳥の湖』『眠れる森の美女』……といったバレエ組曲の踊りを観るときはどうでしたか?

菅井:そうですね。確かにそうやって観ていましたね。それで舞台で踊っている自分をイメージしていました。

両角:さて「一人称で観る」ですが、私は生徒に「その選手の体の中に入り込んで、その選手の観ている風景を想像してごらん。それができれば、試合中に使えるはずだよ」とは言ってきましたが、それはせいぜい静止画像でディフェンスとの位置関係をイメージするくらいの意味でしたね。内村選手の「一人称で観る」レベルは考えもしませんでしたね。

菅井:今、先生が「その選手の体の中に入り込んで」と言いましたが、私も好きなダンサーの体の中に入り込んだつもりでビデオを観ていることはありました。もしかすると、そのダンサーの見ている風景もイメージしていたかもしれません。

人に感動を与えられるダンサー

両角:さすがですね。是非、試してみてください。「将来の夢は、人に感動を与えられるダンサーになること」と言っていましたが、どうですか?

菅井:わざわざ足を運んでバレエを観に来て下さった方を後悔させたくない。少しでも心の安らぎ、心の栄養にしてもらえる踊りをしていきたいと思います。そのためにも、バレエをもっと好きになって、もっと楽しんでいきたいと思います。楽しくないと思っている人の踊りを観ても、絶対楽しくないですよね?心の安らぎや栄養になりませんよね?

両角:そのとおりですね。いよいよロンドンオリンピックが始まりましたが、放送を見ても「人間ってすごいな。こんなこともできるんだ」「人間っていいな」と感動させられますよね。スポーツや芸術にはそういう力があると思います。菅井さんのバレエにもその感動がたっぷりあります。8月19日には、生の菅井円加の踊りを見せてもらいます。
もうすぐドイツ・ハンブルクのナショナル・ユース・バレエ団に入ることになりますが、最後に、菅井さんにとっての和光高校をひとことで言ってください。

菅井:私にとっての和光高校は、人それぞれが持つ考えや個性、夢や目標などを学ばせてくれた、とても大切な学び舎です。

両角:はい、今日はどうもありがとう。とても楽しかったです。

(了)

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プロフィール

菅井 円加(すがい まどか) バレエダンサー

2012年2月ローザンヌ国際バレエコンクール優勝 秋より、ドイツ・ハンブルクのナショナル・ユース・バレエ団へ入団

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