卒業生インタビューvol.34

サイト管理者 卒業生インタビュー
柄本さん

今回は中・高と和光学園で学び、現在、俳優として映画・テレビ・CMなどで多彩な活動している柄本 時生(えもと ときお)さんにお話をうかがいました。インタビューの翌々日には衣装合わせで、次の週からはドラマ撮り、7月には舞台稽古で8月は舞台本番という忙しい最中に快くインタビューを受けてくださいました。

お父さんは有名な柄本明さん、お母さんは角替和枝さん、お兄さんは柄本佑(たすく)さんという俳優一家の中で、どのように育ったのでしょうか。また、柄本家独特のしきたりもあるようですから、その辺にもご注目ください。

小学校時代は公立でいじめられっ子だったという時生さん。和光学園に入ってどんな変化があったのでしょうか。カメラを向けられても常に自然体で、飾らない言葉でご自身を語っていただきました。

今回のインタビュアーには、中高の前校長だった両角憲二先生にお願いしました。時生さんの中学時代には学年主任で、高校時代には校長をされていました。身近だったからこそ、聞き出せた話やご本人にとってはちょっと耳の痛くなるような話もあったようです。

和光中学校に入って・奇跡のエースとは?!

両角憲二先生(以下、聞き手):久しぶりだよね。

柄本時生(以下、柄本): 高校卒業式以来ですかね?

聞き手:中学の時は生活面や成績面で面接もしましたね。でも、高校の時は保護者同席の特別面接はなかったよね?

時生: 特面は……。今だから言うと「親父と和枝さん(母親)が仕事で忙しくて、今地方だから来られないです」みたいなことを言ったことはありました(苦笑)。

聞き手:NHKの朝ドラ『おひさま』はずっと観ていましたよ。脚本の岡田惠和さんが和光のOBで、『ちゅらさん』放送の翌年の親和会教研でも講演してもらったし、ということで見始めたのだけれどね。

時生:えっ、岡田さんって和光の卒業生なんですか?

聞き手:知らなかったの?

柄本:えー。全然。

聞き手:『おひさま』の舞台が安曇野で、私の父親が長野の出身ということもあって、見始めたんですよ。そしたら途中から時生くんが出てきたので、「あれ、時生は役者やっているんだ」って知ったわけ。『おひさま』が2011年の放送だから、時生くんが和光高校卒業(08年3月)して3年後でしたね。時生くんの演じたタケオは、あぁ、農家にはこういうせがれがいるよなって感じがして、良い味出していましたよ。

今回インタビューをすることになって、「その後、時生は売れているのかな?」って、ちょっと調べてみたら、びっくりするくらいたくさんの作品に出演しているんですね。もう、お見それしましたって感じでした。

中学時代の話に戻るけれど、オーディションを受けたのが中1の時?

柄本: 中2ですね。

聞き手:『すべり台』ってタイトルだったのかな?

柄本:そうです。本当は兄ちゃんの佑にオーディションの話しが来たんですよ。でも、小学生役なのに兄ちゃんは高2で身長180センチ近くあって、「佑は無理」ってなったんですよね。それで「それなら弟がいるらしいぞ」ってことで、オーディションに連れて行かれたっていうのがいきさつですね。

聞き手:和光に入ったのはお兄ちゃんが通っていたから?

柄本: オレはそうですね。兄ちゃんが和光を選んだ理由はよく知らないのだけど、春菊ちゃん(内田春菊さん)の紹介かな?春菊ちゃんがうちの事務所だから、その繋がりの線もありますね。

聞き手:佑くんとは3つ違い。文化祭に来て、兄ちゃんの演劇を観たのかな?佑くんが中3の時には『ちゅらさん』やっていましたよ。

柄本: あれ、『ちゅらさん』だったのだ(笑)?!兄ちゃんの友だち3人が舞台に出て来て、少林寺の型をハッハッハッハッハ…とかいきなり始めて、楽しそうだなって思って見ました。

聞き手:佑くんの友だち、文化祭の雰囲気、学校全体の雰囲気にふれて、和光中学校の受験を決めたということになりますか?!それから受験勉強はしましたか?

柄本: 勉強はしました!けど、ほとんど出来なかった(笑)。

聞き手:和光中学に入って、クラブは野球部でしたよね。強い代だったよね。

柄本:下の代の方が強かったなぁ。町田市の大会で優勝しましたよ。

聞き手:でも、時生くんの代の笠井暖くん、良いピッチャーだったでしょう。キャプテンは加川竜大、キャッチャーは越畑春喜。時生くんの代があったから、次の代があるのでしょう?

柄本: オレ、「奇跡のエース」って呼ばれたことがあるんですよ。桜美林中と練習試合して、ダブルヘッダーだったのね。桜美林の1軍を相手に、暖くんがメチャメチャ打たれたんだけれど、その後の第2試合で、オレ先発して完封したのね。ただし、2軍相手。でも、「奇跡のエース」って呼ばれるようになりました(笑)。

聞き手:野球部の仲間とは今でも連絡取りますか?

柄本: 2年生の途中から映画の撮影があって、クラブに出られなくなって、だから、オレって野球部のメンツに入ってないかも……。和光高校でも仮入部だけで辞めているし、なんか寂しいですよね。
でも、下北歩いていると、彼女と歩いているYくんに会ったりします。あと、福地公英が映画の助監督やっているので、そのつながりで会います。石橋穂乃香も同業なので時々会います。

中学の思い出演劇祭を振り返る

聞き手:和光中学校1年の時の文化祭ではクラス演劇をやります。演劇は何をやったの?

柄本: シェークスピアの『真夏の夜の夢』。

聞き手:誰が推薦したの?

柄本:オレ(照)。

聞き手:脚本は誰が書くことになったの?

柄本:オレ(照)。書いている途中で時間がかかりすぎて、蒲田先生がほとんど書き直してくれました(笑)。

聞き手:昨日、蒲田先生……今は結婚されて藤井先生ね……に電話して、「明日、時生にインタビューすることになったよ」って言ったら、真っ先に『真夏の夜の夢』のこと言っていましたよ(笑)。お父さんに手伝ってもらった?

柄本:手伝ってはもらわなかった。親父から本を借りて、パソコンでカタカタカタカタ打って、いざプリントしようと思ったら、家にはプリンターがなかったの(笑)。プリンターがなくて、「どうしよう、どうしよう」って言っていたら、親父の知り合いのところでプリントしてもらえることになって、蒲田先生には「遅刻します」って電話しました(笑)。脚本決めのHRにはなんとか間に合って、それで多数決で『真夏の夜の夢』に決まったけど、でも、長すぎるってことで、書き直して、結局は藤井先生がやることになりました。

聞き手:時生くんは演出?

柄本: 総演出をやりました。最後、王様に出し物を見せる場面で、旅一座の連中4人だったのをもう少し出そうってことで、あと3人増やしました。それでオレも出ました!結構楽しかったなぁ。

聞き手:その演劇は忙しいお父さんとお母さんは観てくれたのかな?

柄本:観てくれた?!えっ、憶えてないです。

聞き手:観てくれたそうですよ。藤井先生は憶えていましたよ。3年生での演劇は『交番へ行こう』でしたよね。これにはキャストで出たのかな?

柄本:あっ、出ました。小学生役で。 聞き手:エキストラ的な役でしたよね。スタッフとして、照明か音響していた? 時生: 照明やっていました。

聞き手:それで、藤井先生曰く「3年の卒業間近の演劇はかったるそうだった」そうですが?!

柄本:それはね、あの頃はたぶん…。かっこつけになっていた。「中2病の男の子」になっていました。

聞き手:もう中3だったでしょ?

柄本:でも、あの頃のオレは「中2病」でしたね。「アウトローがカッケー」みたいに、斜に構えていました。

聞き手: すでに『すべり台』に出演していたから、「もう、オレは学芸会レベルのものはやってられないよ」って、そういうオーラ出していた?

柄本:たぶん、そうです。「もう団体行動なんてダセーよ」「がんばっちゃうのダセーよ」……、みたいなオーラを出していたと思います。

聞き手:さて、その『すべり台』ですが、撮影で学校休むことがあったでしょう。藤井先生は、「時生はふだんから遅刻が多いのに、ちゃんとやっているのかな?」って心配して、監督さんのブログを見ていたらしいよ。そこに「また、柄本が遅刻」と書かれていたそうですよ。

柄本:うわ~、監視されていた(爆笑)。遅刻はすっごいしていた。す、すっ、すっげぇ恥ずかしい~。

聞き手:映画も観たって言っていましたよ。中2で『すべり台』があって、次が『4TEEN』??

柄本:そうです。ただし、『すべり台』は公開が遅れたので、「デビュー作は『4TEEN』」って紹介されることもあります。

聞き手:『スクラップ・ヘブン』。『テニスの王子様』……とかは映画。テレビ『功名が辻』には、これはお父さんと一緒に出ていましたよね?

柄本:ワンシーンだけ出ました。親父さんが秀吉で、オレが天皇様・後陽成天皇役でした。

聞き手:高校時代も結構出ていますよね。

柄本:結構忙しかったです。

聞き手:中学の思い出では何が1番残っていますか?

柄本:なんだかんだ言って、『夏・夢』は1番残っていますね。あと、3年でやった『交番へ行こう』も楽しかったです。

聞き手:やっぱり演劇なんですね。館山水泳合宿は?館山の活動は何かに活きていますか?

柄本:館山、懐かしい~。全部やりきりました。指導員まで。 あっ、意外にショックだったのは、テレビ『ウォーターボーイズ』のオーディションがあって、「中学で遠泳やっていたので泳げます」と答えて2次審査に進んだのに、泳ぎで落とされました。大体、中学の時の記録保持者や入賞者みたいなメンツばっかりが来ていて、レベルが違いました。あのときは「オレ、違うから。遠泳やって、一応の型が出来るってことで、嘘はついてないから……」と、あせりましたね(笑)。 でも、やっぱりあぁいうことやると、根性がつくっていうか、「館山の遠泳と比べると楽だね」と思えることが出て来ますね。

聞き手:ちょっとキツイ話しをしますが、「時生は中学時代、どんなことを書いていたのだろう?」と、文集を取り寄せました。これは、秋田学習旅行の感想文ですね。

柄本:キツイね。それキツイね…。

聞き手:たったこれしか書いてなかったのだよね(笑)。

〈~当時の作文を見せる~〉

柄本:わらび座、えっ、わっわらび…。面白かった。農家はやっぱり楽しかった…。はぁ~。(溜息)

聞き手:そして、こっちが卒業文集「十五歳の主張」。極端に漢字が少ないと思うのですが……。

柄本:ですね。オレって、バカだね。ハハハハハハ……(笑)。

聞き手:お父さん、お母さんは、「漢字の練習しなさい」とか「成績、成績」って言わなかった?

柄本:言わなかったですね。

聞き手:でも、「ここだけは許せない」っていう厳しい面もありましたよね?いじめる側になったとき?

柄本:あの時は、親父にめっちゃ怒られましたね。

聞き手:卒業文集に『みんな、このクラスをよくしようと考えて意見を言っているのだなと思えます。僕が起こしてしまった問題にもまじめに取りくんでくれたし、意見がどんどん出るクラスで、僕はこんなに意見が出るクラスなんてなかなかないんじゃないかなと思いました』と書いているけれど、そのときのことでしょう。話し合いのなかで素直に反省できたということですよね?

柄本:そうそう。

聞き手:中3の1学期末の進路面接に、お父さんが来てくれましたよね。柄本明さんが私の話をず~っと上目づかいに聞いていて、こっちは緊張しましたよ。ノドがカラカラになって最後に「お父さん、どうですか?」って聞いたら、お父さんの答えは「なっ、時生、お父さんの言っているとおりだろう」でしたね。柄本明さんが、いきなり時生のお父さんに変わった瞬間でしたね。 お父さんは工業高校の出身だけど、演劇が好きで役者になったわけで、「学びは押しつけるものではなく、本人がその気になった時が旬」という哲学を持っていましたよね。一方で、父親としては「でも、和光高校に行くには今がんばるしかないよ。それもひとつの旬」「やることはちゃんとやりなさい」でしたよね?

柄本:ハハハハハハ……(笑)。

生物学上、ゴリラはゴリラ?! 先生は先生?!

聞き手: 映画『ウォーターボーイズ』の公開は2001年でしたね。時生くんが中学に入る前に、お父さん出ていた映画だよね? それもインパクトのある役で。あぁいうのは子ども心にどうなの?

柄本:オレ、あぁいうのは全然気にしない。オレ、興味なかったですね。

聞き手:柄本明さんって、色んな役やるわけじゃない。そのことで、からかわれたりしたことは?

柄本:オレ、小学校の時、もともといじめられっ子だったから。

聞き手:それはお父さんのことを言われて??

柄本:じゃない、じゃない。「エモトトキオ」って言う名前をゴロが良いからって「□□□○キオ」って名前にされて、すっごい、いじめられた。○キオって言ってケツ蹴られたりして、わんわん泣いていました。でも、そのいじめっ子は、オレが別のヤツにいじめられていると助けてくれました。良いジャイアンに恵まれたって感じです。だから、別にふさぎ込むことはなかったですね。野球やっていたし。

聞き手:それでは、お父さんは色んな役やって、すごいなぁって思っていた?

柄本:オレね、お父さんお母さんって、生まれたときから、テレビの仕事=役者だと思っていた。生物学上、ゴリラは生まれたときからゴリラでしょ?それと同じで、先生は生まれたときから先生っていう人間、役者は生まれたときから役者っていう人間なんだと思っていたんですよね。

聞き手:じゃあ、自分も役者になるんだと思っていた?(笑)

柄本:オレがなろうと思っていたのは、プロ野球選手か、宮大工でしたね。中学生の時に漠然と「高校に行かずに、宮大工になるっていうのもありだなぁ~」って思っていたかな。

聞き手:それは本を読んでのこと?テレビを見て?

柄本:おみこし担ぐのが好きだったので。

聞き手:おみこし担ぐのが好きで、「どんな人が作るんだ?」っていったら、宮大工だったっていうこと?

柄本:そうそうそう。そういうのに携わる人って宮大工だったり、鳶の人だったりで、そういう職人気質の人達って、「カッケー」と思いました。

お父さんは凄い人?!

聞き手: 色んな役者さんがいる中で、お父さんの存在は?

柄本:そうですね。もう中2の段階でこの仕事を始めたこともあるかもしれませんが、親父の存在の大きさに気づくのは、早かったですね。「お相撲さんでいう横綱なのだ」って思いました。親父がいたから、兄ちゃんが仕事して、「弟もいるらしいぜ」ってなって、オレのこの仕事が始まっているから、「まぁ、あの人にはかなわないな」っていうのはありますね。でも、コンプレックスはないです。あとは和枝ちゃんのでかさもありますが…。

聞き手:『おひさま』では、お母さん=角替和枝さんと親子の役で出ていたよね。

柄本:そうそう、そうそう。母ちゃんが母ちゃん役だった。

聞き手:それは、制作の人が選んだの?

柄本:そうかもしれませんね。

聞き手:どっちが先に決まったんだろう?

柄本:そこら辺は、うちの事務所は口が堅いから、教えてくれません。

聞き手:角替さんがお母さん役でどうだった?やりづらかった?

柄本:やりづらかったですね。でも、やらなきゃならないことは分かっていましたから。

柄本家の作法・映画はひとりで観るモノ・時生の仕事観

聞き手:役者になって、本は読むようになりましたか?

柄本:オレ、小説は一切読んでないです。でも戯曲集は読みます。別役実さんとか、寺山修司さんとかの戯曲は読みますね。

聞き手:ドラマの時代背景を知るために、本は読んだ方が良いと思うけど……、お父さんから「小説も読みなさい」って言われませんか?

柄本:親父は、その時代に何があったかを知るために、昔の文献は読む。戯曲も読む。けど、小説はあまり読まないかも。兄貴はすごい小説読む。和枝ちゃんもすごい小説読む。 あとは、とにかく映画を観る。オレもそうだし、兄ちゃんもそうですね。とにかく映画。

聞き手:それはDVDで?

柄本:映画館で。絶対、映画館。そこは絶対大切だなって思っています。かっこつけたこと言えば、昔の映画でもゴダール、トリュフォー、ジョン・カサヴェデスとか、オリベータとか、ポルトガルの監督とか。そういう監督達の映画を観ることはしていますね。

聞き手:古い邦画も観る?

柄本:小津安二郎、溝口健二、増村保造、成瀬巳喜男…。

聞き手:それは1ヵ月何本くらい?

柄本:オレはね、最近、情けないことに、1ヵ月に16本いくかいかないかくらい。兄ちゃんは30本、1日1本ペースで観ていますね。

聞き手:それは封切られたばかりの映画が中心?

柄本:主に名画座ですね。池袋とか、神保町とか、そういうところに昔の映画をリバイバルしているところがあって、そこに入りびたっている。それは中高の頃から変わらない。

聞き手:そういう時代の映画を観て、疑問に思ったりすること、例えば安保のことを調べたりはするの?

柄本:そこまで詳しくはないですね。連合赤軍とかの話は、なんとなく、原田芳雄さんとかの昔話で聞かされます。あとは実際に会ったりしている足立正生さんとか、映画監督だったりします。

聞き手:時生くん、テレビや映画に出るようになって、演技力についてはどう考えていますか?劇団○○の何期生で演技力を鍛え上げたという舞台俳優とは違いますよね。どうやって演技力をつけるようにしていますか?

柄本:映画ですね。とにかく映画。

聞き手:とにかく映画が好きなんだ?

柄本:最近は、好きって言わなくなっちゃいました。

聞き手:なんて言うの?

柄本:仕事だから観るっていうようになっちゃいました。好きって言うほど観てないなって思う。兄ちゃんとか凄すぎて、1日1本くらいは観ていて、年間で280本超えてるんですよ。

聞き手:月15~16本だって十分凄いよ。

柄本:この仕事していると色んな人と会うけど、観てる人はいっぱいいます。中には年間500本観ているって人もいるし。恥ずかしくてね、オレ。カッコ悪いなって思う。もっともっとだって思っちゃいます。

柄本:映画館には一人で行くの?

時生: 映画はひとりで観るモノだって言うのは言われ続けていました。小学校4年生の頃までは一緒に行っていましたが、小5からはお金を渡されて、電車乗せられて観に行っていましたね。映画はとにかく一人で観るモノだって。柄本家の作法ですね。映画は絶対1人で観るモノだって。高校の時、友だちから「一緒に映画観に行こうぜ!」って誘われても、「何で一緒に行くのだろ?」って思っていましたね。とにかく映画を観るときは孤独、一人。放任主義っていうのか、放っておかれていました。家族関係が冷たいとか、仲が悪いとかじゃなくて、ですよ。

聞き手:お母さんもそう?

柄本:和枝ちゃんもそう。

聞き手:それって放任主義ではなくて、小さいときから英才教育受けていたようなものじゃない?!

柄本:今、考えると英才教育だったのかも。でも、俳優にするつもりはあの人達、サラサラなかったと思う。

聞き手:俳優にするつもりはなくても、もしそのつもりになったときに出来るようにしておいたということですね。観た後に感想は聞かれましたか?

柄本:聞かれました。こんな文章力だから、よく怒られました。兄ちゃんなんかは怒鳴られていました。兄ちゃんね、「感想は?」と聞かれて「あぁ、面白かった」って言ったんです。そうしたら、和枝さんがマジ怒って、作文用紙持って来て「書け」って言ってました。

聞き手:大事な時にはビシッというわけですね?

柄本:活劇を観に行くわけだから、「良いね、中村錦之助!」とか、ヤクザな映画を観たら肩で風を切って歩くみたいな、それが風情だろう!みたいに感じていました。それが、オレの感想ということでしたかね?

聞き手:色々なジャンルの映画を観ているわけだね。黒沢明とかも観ているの?

柄本:観てます、観てます。いっぱい色んなもの観ると勉強になります。別に演技に活かそうとは思っちゃいませんけど。

聞き手:やっぱり役者、生物学的に観ても役者なのだよ(笑)。

柄本:本を読むと想像力が広がるっていうのは思います。戯曲を読むと、やっぱり舞台の勉強になりますね。

聞き手:映画と舞台の違いについては、どう考えてる?

柄本:オレは、考え方はまったく同じだと思ってます。やるのは人間だし。ただし、舞台の場合は他人=お客さんに直接見られる怖さがある。映画の場合は、撮影の仕事で来ているスタッフに見られるだけで、観客に直接見られるわけではない。そこら辺は違うって話になると、演劇の人とは良くケンカになったりします。でも、基本的には同じだと思ってます。

聞き手:今回の仕事はイヤだな、こういう役はやりたくないなっていうのはありますか?

柄本:今のところ、そういうのはないですね。というより、どんな役か調べもしないで「やります!」って答えちゃう。とにかく仕事だと割り切ってる。仕事は断っちゃいけないって思ってる。「仕事は、8割嫌でも2割良いことがあればいいかな」って、オレの中に割り切っている部分があるかな?でも、たまにめっちゃ良い人に出会えると、嫌なことが消えて10割良いなって思っちゃう。

聞き手:犯罪者の役もあったでしょう?

柄本:オレね、覚醒剤常習者とか、性犯罪者の役とか、結構その手の役やってるんですよ。

聞き手:昨日、インターネットで調べたら、犯人の役で褒められていましたよ。

柄本:なんでも褒められるのは嬉しいですね。 映画やテレビの仕事っていうのは芸術っていうかなんていうか、他人様に見てもらうって言うのがとにかくでかいじゃないですか。画面に映って、見られて、感動させるっていうのが仕事だと言われやすいから、やってるうちに芸術家になっちゃう。勘違いしちゃう。でも、オレが自分で芸術ってモノを持っちゃいけないんだよね。芸術っていうものは後からついてくるものだと思っていますね。 芸術だとか、感動させるつもりだとかにとらわれないで、とにかく、社会人として一生懸命演ることだと思っています。

聞き手:その役になりきるってこと?

柄本:う~ん、それとはまた考え方が特殊なんだと思う。なりきるとも思わない。むしろ、そういうことと闘っていきたい。仕事を断らないでいくつもいくつも重ねていきたい。 役者なんて誰でも出来るぜ!って言ってやりたい。みんな出来るぜって言ってやりたい。「難しいよ」っていう人がいると腹が立つ。「この台詞言えないんです」なんて言うのを聞くと腹が立つんです。「あんた、もっとこの仕事、本気でやれよ」って言ってやりたい。やれないことをやるのが我々の仕事だと思ってます。

聞き手:それは、柄本明さんも一緒?

柄本:そこは同じだと思う。石橋蓮司さんと親父が1回トークショーをやっていて、面白かったんだけど。蓮司さんが「俳優は1本筋を通して、道を歩くときも俳優じゃないと…」って言うのに対して、親父は「俳優なんて、誰だって出来ますよ」って言うの。そこにいるお客さんを指さして、「あんた、そこで聞いてる演技をしてるね」なんて言うの。「ほら、出来てる。あんた、それが出来れば俳優だよ」って。そこが両極で違うんだけど。オレ、蓮司さんのことはスゲエ大好きで、高尚なことを言ってるなって思う。でも、蓮司さんの言ってることは分からない。ずっと親父の言っている言葉を聞かされてきたからかもって思います。

聞き手:さっき、明さんは横綱だなって言ってたじゃない? 誰でも横綱にはなれないでしょう。

柄本:そりゃあそう。やれるかやれないかだと思う。あそこまで行くのは無理だと思ってます。

聞き手:将来、役者だけじゃなくて、監督をやりたい気持ちはありますか?

柄本:ちょっとあったりもするけど、でも、今はまだないかなぁ。監督は、評価されたり、批評されたり、1番怖いから、まだ、その度胸と覚悟はないですね。

和光の後輩・同窓生・先生にむけて

聞き手:後輩達、中学・高校生にむけてひとこと。

柄本:部活、これはとにかくやっておくと良いと思いますね。オレは、仕事が入って来て、途中から幽霊部員になっちゃったので……、今さらだけど後悔していますね。あと、音楽もやっておくんだったなぁ。オカモトズのハマくんは「ハマくん」って敬称つきだもの…。(笑)
和光は本当に楽しくて、みんな学校生活を楽しめば良いと思います。将来のことは、中学高校時代に気づくヤツは気づくし、気づかないヤツは気づかないけど、でも、どっかでね、みんなやりたいこと見つけてますよね。だから、中高では楽しめば良いんじゃないかなって思います。もちろん、悪いことしなければ…(笑)

聞き手:同窓生に対して伝えたいことはありますか?

柄本:連絡ください!最近、だ~れも、連絡くれないから…。たまには会いたいなぁ~。携帯番号替えてないから!(笑)

聞き手:10月3日に同窓会のパーティーがありますよ。

柄本:その辺、京都で撮影なんですよ…。

聞き手:和光の先生達にひとこと。

柄本:元気にやってます。元気です!迷惑をかけたこともありますが、今は半人前の社会人ですが、がんばっております。45歳くらいまでは、まだまだ半人前のつもりでがんばっていきます。先生たち、長い目で見ていてください。

聞き手:今日は長いことありがとう。身体に気をつけて。

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プロフィール

柄本 時生 俳優

1989年10月17日生まれ。 中学・高校を和光学園で過ごす。在学中から俳優活動を始めるとともに、個性的な役どころを次々と演じてきている。 「Jam Films S」(03)のオーディションに合格し、『すべり台』で主演デビューを飾る。また2008年の出演作品により第2回松本CINEMAセレクト・アワード最優秀俳優賞を受賞。 主な出演作に、ドラマ『みんなエスパーだよ!』(13/TX)、『世界一即戦力な男』(14/フジテレビ+)、『太鼓持ちの達人』(15/TX)、『本棚食堂』(15/NHKBS)、映画『愛の渦』(14/三浦大輔監督)、『超高速!参勤交代』(14/本木克英監督)、『深夜食堂』(14/松岡錠司監督)、『映画 みんな!エスパーだよ』(15/園子温監督)、舞台『赤鬼』(14)『ゴドーを待ちながら』(14/ET×2)、『南の島に雪が降る』(15)、など。 今後の予定は舞台「レミング~世界の涯まで連れてって~」が東京芸術劇場にて12月6日(日)~12月20日(日)まで上演。ドラマ「監獄学園」(TBS)が10月27日(火)より放送予定、またTBS年末年始ドラマスペシャル「赤めだか」にも出演が決まっている。

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