卒業生インタビューvol.28

サイト管理者 卒業生インタビュー
松本さん

今回は小中高と和光学園で学び、自らの趣味を職業とされた松本もも子(ペンネーム:幸田もも子)さんにインタビューしました。累計100万部という大ヒット作の裏側には、今までどんな葛藤があったのでしょうか? また今後の展望についてお話を伺いました。 漫画家という職業柄、ちょっと残念ですが顔出しはNGとのことです。

松本美穂(以後、聞き手と表記): 久しぶりですね。私がももちゃんの漫画のファンだってこともあって、今回は自ら立候補しました(笑)
学生時代のことや現在のことなど、色々と聞かせてくださいね。早速だけれど、漫画を描き始めたきっかけってなんだったの?

松本もも子(以後、もも子と表記): そうですね~。私は和光小学校出身なので、当時の美術科の落合先生が「いいじゃん、いいじゃん!」ってやたら褒めてくれたことですかね。まぁ、誰にでも言っていたのかもしれませんが…(笑)。小5から従姉妹のお姉さんの影響で漫画を描き始めたのですが、ノートに漫画を書くのって結構流行っていたんですよね。落合先生に見せると私の絵漫画が、なぜかカラーコピーされたものが戻って来たりして(笑)

聞き手: 小学校の担任の先生は、どなただったのでしょう?? またどんな感じでしたか?

もも子: 1年は斉藤先生という女性でしたが、2年が藤田先生、3・4年が下鳥先生、5・6年が鎌倉先生と男の先生が続きました。
藤田先生は良い兄貴って感じだったし、下鳥先生や鎌倉先生は、お父さんって感じでしたね。 ちょうど甘やかされた低学年から、けじめを大事にしよう…っていう高学年まで、色々な先生方に育てていただきました。

聞き手: そもそも和光を知ったきっかけってなんだったの? 鶴川在住なのに鶴小の卒業生ではないみたいだし…。

もも子: 元々、私の親戚には自由学園卒業の人が多かったのですが、祖父が「平和教育にも力を入れている和光小学校も良いよ」って勧めてくれたんです。当時は世田谷に住んでいましたから。

私の行った幼稚園は制服のあるような幼稚園で、私もとてもおとなしかったので、このままで大丈夫かな…という心配が親にあったのでしょうね。それで母が和光小を観に行くと、子どもが先生に群がっていて、木のようにぶらさがっていたんだそうです。それを見てここなら任せられるって確信したって言っていましたよ。

家は、私が小学校のときに、中学・高校と鶴川に通うことになるのだからと考えて、鶴川に引っ越したんですよ。鶴小は、私の1つ下の代が1期生なので、私が小学校入学の頃はまだ出来ていなかったんです。

鶴小を羨ましく思い、横目で見ながら世田谷の和光小学校に通っていましたね(笑)

聞き手: 色々な思い出があると思いますが、行事やクラブ活動など、印象深かった話を聞かせてください。また、どんな風に漫画にのめり込んでいったのでしょうか?

もも子: 小学校のみずがきキャンプでは小3~6年まで過ごしていて、本当の兄弟のような絆が強まって、楽しかった思い出しかありません。ここで得られたものは、私にとって永遠の財産になっていると思います。運動会はもの凄く盛り上がりましたね。障がいを持った同級生のハンデをどうにか挽回しようという話になって、リレーで遅れた分は、光佑(※和光人インタビューvol.20 現在MLSプロサッカー選手の木村光佑選手)に任せた…って感じで盛り上がりました。

沖縄学習旅行では、昭和史を肌で感じた瞬間でした。

中学校の館山水泳合宿では最後まで泳ぎきった…という自信にはなったけれど、私にとってはあまり好きにはなれない行事でしたね。

和光学園での行事は子どもの時にしか出来ない経験が詰まっていると思います。 大人だったら拒否するようなことでも、みんながいたからこそ経験できたことはたくさんありますね。6㎞完泳は今では私の自慢になっています。そんな中学生はどこにもいないでしょうから…。

中学ではスラムダンクに憧れてバスケ部に、高校ではバレー部に入部したものの、長続きはしなかったですね。仲間と共におこなう活動に魅力を感じていたのだと思います。この頃から漫画はメチャメチャ読んでました。

聞き手: 私も今の苗字は松本なのだけれど、なぜペンネームが幸田(こうだ)なのですか?

もも子: 当時、ペンネームを決めるときに読んでいて、好きな漫画の中の主人公が、幸田だったので、まっ良いかとそこから付けました(笑)

聞き手: 中・高生になって漫画との関わりはどうなっていったのですか。

もも子: 中学生になると思春期真っ只中で、中1までは伸び伸び描いていたのですが、徐々に「オタクなんじゃね?!」みたいな感じの空気が流れ始めて漫画を描いていることが恥ずかしい頃でした。そんな中でもアヤやナリトモは「隠さなくても良いジャン!」って言ってくれました。中学生の頃は、音楽室を借りてピアノを弾くのが好きでした。

高校時代のマンガは私にとって息抜きであり、遊びの延長でしたね。そこで父が怒ったんです。そんなものは何の意味もない。本気でやれるものに取り組みなさいと。

そこで私は発想の転換をしたわけです。ピアノは辛い。このままやっていれば、将来は、ジャズバーか何かで弾くようになるのかなと漠然と考えていたのですが、本気でやれば、ずっと漫画を書いていていいなら、マンガで生きていこうとその時に決めました。

高2になって、別冊マーガレットで入選したこともあり、高校3年生にして、学業とマンガの両立になったわけです。夜から朝に掛けてマンガを描いているから、鶴川に住んでいるのに遅刻が多い…そんな生活が続きました。入選したから即デビューってことではないんです。コンペに通らないといけないので、今よりもよっぽど描いてましたね。

聞き手: そうだったわね。和光大学の推薦も、当時は何日以内という基準があって、その遅刻や欠席の日数がギリギリで、心配してよく学年会の話題になっていたもの…。高校時代のことをもう少し聞いておきたいですね。

もも子: 高校では、1年で若山先生、2年で塩原先生、3年で大澤先生がそれぞれ担任でした(笑)高校では自立するという意味で、先生方は温かく見守ってくれていたのだなと思います。

聞き手: そうだった、そうだった。でもね、漫画家なんて誰もがなれるものじゃないでしょう。それで大学に入ってどうなったの?

もも子: うちの父は普通のサラリーマンですから、今考えれば安定した職に就いて欲しかったのだと思います。大学でも単位だけは取れ!!って盛んに言ってましたよ。元々、学業とマンガと2つのことが並行して出来るほど、私は器用なタイプではないのを知っている母が「そんなんだったら辞めちゃえば…」って。言われてみて考えました。

聞き手: それで大学を辞めてしまったの??

もも子: はい。今にして思うと、あの時、辞めて良かったと思います。あとがなくなったんですから。そうすることによって私のお尻に火が点いた(笑) マンガに集中することが出来たんですよ。

聞き手: 和光学園で役に立ったことって、どんなことがありますか??

もも子: 少女マンガの場合は、心理描写が細かいので、友達関係や色々な経験、深く考えることが私のマンガを描く上ではベースになっています。現に私のマンガでは当時の経験や人間観察、考えていたことが大いに盛り込まれています。

聞き手: 壁につきあたったことはなかったんですか??

もも子: 勿論、ありましたよ。小学校時代はすごいすごい…と周りが褒めてくれた認めてもらったことによる自信が、マンガの世界では通用しないのです。全く何も知らない情報の少ない田舎から、大都会に放り出されたような感覚に襲われました。

この世界はできて当たり前なので、編集部の担当の方からは色々教わりました。例えば、ここの仕事場を見学に行ったら?とか、アドバイスをくれて。私の担当さんが『ごくせん』の担当者でもあったくらいの人なのですが、まるで先生のようですよ(笑)

聞き手: 憧れの作家さんっているのですか。

もも子: 河原和音先生とか、咲坂伊緒先生とか、少女漫画の作家さんは心理が分かってるなぁ~と感じます。視野が広いって言うんですかね。

聞き手: 今はどんな生活サイクルなの?

もも子: アシスタントさんがMAXで8人ですね。大体、4人・4人くらいの交代制です。でも1度に集まるのは打ち上げの時くらいですね。月末の〆切前になると時間がどんどん押していって、朝の5時くらいから眠るって感じで、16時くらいから仕事って時もありますし、アシスタントさんに12時くらいに入ってもらって朝の早起き組とか深夜遅くまで頑張る組とか色々ですよ。今は5時間くらい寝られているけど、締め切り前は、あまり寝られないですね。最後原稿があがったときは、そのまま打ち上げにいって、かえってから泥のように眠ります。

聞き手: そうして次の締め切りに向けて次のサイクルが始まるのね。本当に大変よね。今はどんな感じの時期ですか?

もも子: 今はネーム中で、大まかな絵コンテでストーリーやらコマ割りを確認しているところです。(写真参照)友達と会うのは、大体、ネーム中の月初めにしています。結婚式も月末に挙げないでって頼んでいるんです。

聞き手: 『ヒロイン失格』が先日10巻で完結したけれど、新作はどんなものを描いてみたいですか?

もも子: 『ヒロイン失格』での主人公のはとりは、利太のことが好きなのにイヤな奴、腹黒い部分がある子で、マンガのヒロインとしてどうなのよ…って感じだったんです。だから新作では正統派ヒロインを描いてみたいと思っているのだけれど、自信ないなぁ。まだ1回目で人物像がしっかり定まっていないというのもありますが…。(笑)

聞き手: 最後に和光生になにかメッセージをください。

もも子: 私の場合はぴったり来るものがたまたまマンガだっただけです。和光はディスカッションが多いところですから、本当の自分のことを知って欲しいし、見つけてもらいたいと思います。

和光高校では、(他の所に比べれば)勉強、勉強と急き立てられてることが少ない分、たっぷり時間があると思いますから、有効にその時間を自分の好きなことに使えると良いですね。それは大きなチャンスでもあるのですよ。

(了)

この記事を読んだ方はこちらも読んでいます。

プロフィール

松本もも子 漫画家

和光小学校・中学校・高等学校卒業。和光大学は漫画家一本に絞るためにやめる。 少女マンガ家。ペンネームは幸田もも子。別冊マーガレット系列に作品を掲載している。代表作『ヒロイン失格』は全10巻で累計発行部数は100万部を記録。

ブログ

和光学園を支えてくださる方に寄付をお願いしています。

くわしく見る