卒業生インタビューvol.6

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堤未果さんは、小学校、中学、高校生活を和光で過ごし、その後米国の大学で学業を修められました。その後、国連アムネスティインターナショナルニューヨーク支局員を経て、米国野村證券に勤務。その時に9・11のテロに遭遇されました。

その出来事をきっかけに米国内のさまざま人々に対して取材活動を展開し、アメリカに内在する様々な問題について考えた『グランド・ゼロがくれた希望』(ポプラ社)を執筆。現在は帰国し、アメリカでの経験をもとに講演や執筆活動を精力的に進めていらっしゃいます。今回は、9.11以降のアメリカの動きや抱える問題について話してくださいました。長文インタビューです。

9.11の出来事で、戦争が自分の日常生活とは決して重ならないものとしていたことに気付かされた自分

聞き手:『グランド・ゼロがくれた希望』(ポプラ社)を読みましたが、すごく読みやすくて、高校の先生も何人かすでに読んでいます。ずいぶん色々な経験をされて、すごく活躍されてるんだなあと感心しています。

堤:ありがとうございます 。

聞き手:9・11の出来事があって、ああいう風にアメリカが攻撃的に変わっていきましたが、あれは一体なんだったのか。少し時間がたって考えてると、もしかしたらそういう操作みたいなこともあったんじゃないかとか、まずはその辺りからどうでしょうか?

堤:あの直後というのは、私にとってもアメリカの人達にとっても、今まで攻撃されたことが無いアメリカという国がいきなり攻撃された、ということがすごくショックでした。

私自身は国連やNGOに勤務して、もちろん和光の平和教育も含めて、紛争している国や内戦をやっている国の事情などに普通の人よりは近い位置にいたはずなのに、実は頭のどこかでは、それと自分の日常生活は決して重ならないものとしていたんですね。どこかで自分だけは毎日、翌朝も、無事でいられるかどうかの心配なしに眠りにつけて…安全な国で絶対に守られているという思い込み。普段日常の中では意識していないんですけれど、それに気づかされたんです。

あのとき「サラダボウル」と呼ばれるアメリカが一気に団結して、星条旗の下に自分達と一緒に立って報復を叫ばなければお前は敵だという空気があったとき、私はどうしても入れなかった。どうしてなんだろうと考えたら、やはり自分の中に「祖国」というものがあったから。それは普通に生活しているときは影を潜めているけれど、何か非日常の状況に突然放り込まれたときに、その存在が浮かび上がってくる。ああ自分は日本人なんだな、自分は日本に属しているんだな、ということを感じるんですね。例えば憲法九条をつくった人がいて、それを守り続けてきた人の努力があって、だからこそ自分は絶対に安全だっていつも思えていたんだなって。私は和光で小・中・高で教育を受けたのに、やっぱり憲法九条は教えられても教えられても、実感が無かったんです。

聞き手:和光小学生のときに広島に行ったのですか?

堤:行きました。広島と長崎に。ただ和光で教えられていたからこそ、その時クリックしたんですね、私の中で。あっこれだったんだなって。どれだけ広島で被爆者の人に話を聞いてもわからなかたけれども、やっぱり自分が何か追い詰められたときに、例えば学校で教わったこととか、先生の言葉というのはどこかの引き出しに入っていて、自分がその壁を破るきっかけになってくれたりとかするんだなあっていうのをすごく感じたんですね。で、日本に帰ってきたときに人質事件があったじゃないですか、三人の。

聞き手:はい、イラクのね。

堤:あれ見てたんですけど、あのときの世論の豹変ぶりがすごく、人の気持ちってこんなにガラっと変わっちゃうんだなあって。9・11直後のアメリカに似ていました。あの星条旗のシーンはすごく怖かったけれど、不安や恐怖を植えつけられると、たぶんどんな人でもああなるんだなと思いました。それからもうひとつ、「知らない」ということ。

聞き手:情報を日本人はよく知らない。

堤:知らない。日本人も知らないし、9・11直後のアメリカ人が何であんなに恐怖に支配されたかっていうと、知らないんですね。何も。

聞き手:誰がそう知らない人を方向付けているように思いました?

堤:マスコミ。アメリカの場合はマスコミが大企業に所有されてるので、メディアコントロールがすごいんですね。例えば戦争をするとか、どっかの国を爆撃すると必ず儲かる人がいて、その儲かる人と大企業はきちんとつながっている。マスコミにも責任があるし、それからニュースを見ない、新聞読まない人がアメリカは多すぎる。

聞き手:新聞を読まない?

堤:そうなんです。日本って田舎でも新聞読むじゃないですか。私、大統領選の取材に去年行って、激戦区をずいぶんまわったんですね。そのときに面白いなあと思ったのは、例えばニューヨークってすごく都会の印象じゃないですか。そのニューヨークのマンハッタンより北部に行くともう田舎で、そこの家に取材に行くと、新聞ないんですよ家の中に。新聞なくてテレビなんですね全部。加えて教会に行って教会の教えをものさしにしちゃうとかね。

聞き手:それは新聞をとる習慣がないのか、買うお金がないのか、それともそういうものに頼らない生活が根付いているんですか?。

堤:習慣もないし、活字をまず読まないんですね。アメリカ人の平均読書数は年間一冊から二冊なんですよ。

聞き手: -年間に?

堤:そう、年間に。新聞って結構自分で冷静に読めますけど、テレビっていうのは受身じゃないですか。テレビもよく調べてみると、一番見られているのがFOXニュース。FOXニュースはマードックという人が所有していて、かなり政府側で有名なんです。すごい右翼でニュースも結構ねつ造したりしている。

軍が社会の縮図みたいになっていて底から底へスライドするだけで絶対逃れられない仕組みになってる米国

聞き手:アメリカっていうと、もともと武力的な強さとか、政治的な強さといったものへの信奉があると思いますが、そういうものをアメリカ人は好んでいるのか、またそうしたメディアによってつくられるものなんでしょうか。

堤:まったくその通りですね。今回、イラク戦争の帰還兵の取材を一ヶ月ずっとニューヨークでしていたんですけど、その時にごく普通のアメリカの人達を取材したんですね。イラク戦争をどう思うか知りたくて。そしたらやっぱりブッシュを崇拝している人が多くて、別にブッシュが威圧しているわけではないんですけど、何故なんだろうとインタビューしてみると、やっぱり強いアメリカを彼は実践しているから。強くなければやられるじゃないか、9・11みたいに。という考えなんですね。そしてテレビやニュースがものすごく強迫観念をあおるようなところがあります。でもとにかくやっぱり知らないですねえ。アメリカ人は。

聞き手:9・11後グランドゼロがひとつまた終焉を迎え、アメリカはどうですか?5年がたってブッシュとは違う反ブッシュ的なものが育っているのでしょうか。

堤:両極端になってますね。大統領選のときにそれをすごく感じたんですけど、9・11があったことで、怖いからより守りに入った人達。それはある意味強くてモラルがあるアメリカのイメージにしがみついている人達と、それからあれが起きたことで、何かおかしいなと思った人達がいるんですね。それとインターネットの力が革命的な変化を起こしてですね、本当のことを伝えていく手段としてインターネットが使われて、気づいて立ち上がった人達もすごく増えたんです。それであの選挙では投票率もすごく増えました。それから実際にものすごい数の若い人がイラクに行かされたので、その家族が立ち上がったり、帰ってきた兵隊達が声を上げ始めているという両極端な状況です。けれども、同時にすごく貧富の差が激しい国なので、何だかがんじがらめなシステムになってしまっている。志願制なのに弱い人達が追い詰められてやむなく入隊せざるを得ないとかね。

聞き手:志願制とか言いながら、貧しい人が行くような仕組みになっている。アエラの記事でも少し触れてましたよね?

堤:そうですねえ。アエラの取材で私はこれに「見えない徴兵制」というタイトルをつけたんですけど、貧しい地域の高校生だけがピンポイントでリクルートされてるとか、同時に健康保険とか失業保険を同じ年にカットして行き場のないように追い詰めるの。それでそういう子たちが結局生活苦から入隊してしまう。80%以上は大学に行きたくて入るのに、軍に入った兵士の中で大学に行ける人は35%しかいないんですね。

聞き手:軍役に行ったにもかかわらず、帰ってきても行けない理由は何なの?

堤:お金がないんです。結局巧妙にできていて。

聞き手:あっ、全部が行けないような状況を作っちゃうんだあ

堤:そうなんです。例えば前金で1200ドルねって言われるんですよ、契約した後に。1200ドルって私たちからすると15万なんですけど、払えないんですよ。それぐらい貧しい子たち。そうすると結局社会の底辺から逃れようとして軍に入っても、軍が社会の縮図みたいになっていて底から底へスライドするだけで絶対逃れられない仕組みになってるんですよ。戦争から帰ってきても今度は保証がない状態になってるんですね、その子たちって。

兵役中っていうのは、国防省の傘下でやたらに予算もあるんですけど、帰ってくると退役軍人協会という機関の傘下に入って、そこは毎年予算がカットされてるところなんですね。

2003年と2004年でいいますと、毎年一億ドルカットされてるんです。そうすると病院はどんどん閉鎖されちゃうし、だから兵隊さん帰ってきてすぐに精神的なケアとか必要なんですけど、今一年待ちなんですよ。予約が。そうすると結局戦争に行く前より貧しい状態になってしまうんですね。プラス精神的にやられてるんで。それで仕事できなくてホームレスになっちゃうんです

聞き手:ひどいね。

堤:ひどいんですよ。ほんとに信じられなかったんですけど、ホームレスセンターに行って取材したんですけど、戦争の話って和光にいた頃はおじいさんの話だったんですけど、今私より若い22歳の男の子が戦争の話するんですよ。ホームレスなんですよ。公園で寝てるところインタビューしたんですけど、そしたら、あっ、戦争を知らない子供たちって自分のこと思ってたけど、もう変わっちゃったんだなあって。

聞き手:自分より若い人達が戦争へ行って死んでる。

堤:だからこれはやっぱり伝えないと。それでその子たちに聞くとね、「契約して入隊したときに、戦争行くと思いましたか?」って聞いたら、「思わなかったって」っていうんですよ。ていうことは戦争っていうのはいつの間にか外堀を埋められてて、気づいたら銃をもって砂漠に立ってたっていうことになるので、人事じゃないのね。それをやっぱり若い人に、私講演とかで一所懸命伝えてるんです。

聞き手:アメリカでそういう、例えば貧しい地域でね、話すってことは危険はないの?兵隊をリクルートする側にとってみると邪魔な存在になっちゃう。

堤:リクルートの話も、あれからブッシュ政権がテロの翌年に通した法案っていうのがあるんですね。「落ちこぼれゼロ法案」っていうのがあるんですけど、その法案は教育相のホームページにいくとでてるんですよ。全部オープンなんです。民主主義だから建前が。ところがみんな読まないだけ。例えば私がそのホームページ読むじゃないですか。そうしてよーく見ると、公立の高校は生徒の個人情報を軍のリクルーターに挙げなきゃいけない、と一行さりげなく書いてあったりする。それをもし断ったら助成金カット。

聞き手:それだ、それだ。情報を軍に渡しちゃうんだよね。

堤:そう、助成金カットされるから。でもそれは私が盗聴したわけでもなくて、軍はオープンにしてるんですね。だからみんな読まないだけなんですよ。

聞き手:かなり膨大な量の書類なんでしょ?

堤:そうですね。

聞き手:ちょっと視点を変えて、日本とアメリカの関係。日本がイラクへ自衛隊を派遣する、そういう方法で互いに利用しながら、対北朝鮮や中国との関係ではアメリカを後ろ盾にしている。久し振りに日本の状況を見てどう思いますか?

堤:かなり右にいっていて、すごく今の日本の状況っていうのが怖いと思うんですね。何が怖いかっていうと、昔は政治家の先生もわりと過激なことは遠慮して言ってたところがあったと思うんです。今は開き直ってる。ガンガンひどいこと言ってるじゃないですか。それをはっきりしてていいみたいな。やっぱりアメリカと一緒でね、崇拝する人がいて。すごくアメリカの後を追ってるみたいで怖いなあと思うんです。アメリカも一緒なんですけど。

じゃあブッシュ大統領が悪魔みたいだから、ブッシュを殺せばいいのかっていうと、そうじゃなくて、国民の私たちがもっとほんとに何が起きているかを、知らなくちゃいけないと思うんですね。例えば日本の企業の社長さんの勉強会とかで、アメリカってこういう国なんだよって私が話をするとね、知らないんですよね。「アメリカって飢餓状態の国民が3100万人もいるんですか?北朝鮮の比じゃないじゃないですか。嘘だろう」なんて言うんですよ。企業のトップが、「自分が知らないこと」は「ないこと」だ、って思ってるんですね。

それでアメリカって一番近い国じゃないですか、日本にとっては政府同士も密接な関係で。ということはアメリカという国をちゃんと知らないと日本人として、イラク戦争どう見るのか、日本政府の動きをどう見るのかってことが判断できないと思うんですよ。アメリカなんてたかだか200年の歴史なんだから、アメリカについてまずきちっと本当の情報を知ること。それから日本のこともそうですけど、やっぱり知るっていうことと、知ったら伝えていくっていうことをもっとした方がいいなあと思うんですね。例えばNGOの人が、「日本人の若い人は無関心で動いてくれないんですけど、どうしたらいいですか?」なんて言うんですけど、動くんですよ若い人は。ちゃんと話せば。もっとずっと心がやわらかいから共感すれば必ず動いてくれる。それから選挙に行っても一票だと変わらないってみんな思っちゃうんですけど、変わるんですよ絶対に。絶対変わるんです。

聞き手:無力感は大きいですよね、日本の選挙を見ていると。

堤:大学なんかで講演しますと、「そんななんですかアメリカって」って、「もっともっと知りたいと思いました」とか「ぼくにできることないですか?」とかね、19歳の子とかが言ってくるんですよ。

聞き手:例えばディズニーランドが与える明るくて楽しくてソフトなイメージ。カラフルだけどモノトーンの文化を押し付けてくる。そういうものを通して親米的なムードとかイメージが育てられていくというのは、すごく大きいと思うんですよ。例えば堤さんが高校のときにアメリカにすごく憧れたと書いてあったんですけれど、それは何がそうさせたんでしょう?

堤:すごく豊かな時代に生まれたんですよ。もちろん戦争も知らないし、たくさん持ったり、便利に暮らす、ってことが幸せのものさしだって教わって。ちゃらちゃらしてたんですね。もっと便利な暮らしの先にあったのがアメリカンライフスタイルだったんですね。制服がなくて自由な若者たちとかね。それから新しいことに挑戦することを怖がらない勇気とか。で、それは変わってないんですよ。あるんですよ、今も。 ただし私が間違えてたのは、そのアメリカしか見ようとしてなかった。見たいイメージしか…。 恋人もそうじゃないですか。見たいところしか見ない。だから別にね、アメリカが9・11の後に急に好戦的なったわけではなくて、昔から同じことやってるんですね。だけどそれは私が見たくなかったこと。平和で恵まれて物があふれていいる時って別に見たくないんですよ。関係ないから。

聞き手:どんどん日本に入ってくるアメリカの文化や音楽なんかが、そういう役割を果たしていますよね。

堤:例えば原爆の話を聞いても、大変だったんだなあって思うじゃないですか。私そうだったんですね、和光の頃。でも例えばさっきの話しじゃないですけど、19歳の自分と3つぐらいしか違わない子が、同じようなライフスタイルだったのに、いつの間にか戦争に行っていて帰ってきたら、こんな体験してこう変わったんだよって聞いたら、共感できるんですよ。例えば戦場でね、手紙を書くんですね。ラストレターっていうのを、みんなね、政治なんか興味がなくて、共和党と民主党の違いもわかんないような子達。その時は日本の高校生と同じなの。その子たちが戦場に行ってね、誰が敵かわかんない極限状態に行ったときに、すごい恐怖ですよね。その時にやっぱり自分が死ぬことは、まず怖くなくなるんですよ。というのは人を一人殺したら神様が罰を与えるから、自分もいつ死ぬかわかんないだろう、順番が来るだろうってみんな思うんですね。で、代わりに自分が死んだ後の家族とか友達を心配するんです。そのために手紙を書くんです。それを持ち歩くんですよ。

そういう話をすると、日本の高校生とか大学生も自分とつながるから心が動くんですね。例えばイラクの子どもがこんなにかわいそうですよって報告をいくらNGOがしても、やっぱり共感できないことには動かない。悲惨なことっていうのはもう免疫できちゃってるから。でも例えば家族のことを考えたんだよって話をすると、心が動くから立ち上がるんですね。若い人は。

だからそこに私は、例えばアメリカならではってことではないのかもしれないけれど、家族の絆や、生きている間に少しでも幸せをつかみとろうと日々努力することや、悩んだり挫折したり、そこから気づきを得て立ち上がったり…色々ありますよね。人間に共通しているもの。それがたとえイラクであろうとアメリカであろうと、日本であろうと、世界中どこでも私たちが共通して持ってるものがあって、それを情報として聞いたときにね、必ず人間て心が動くんですね。ディズニーランド的なアメリカのイメージってあるじゃないですか。あれを悪だという人もいるかもしれない。でもね、アメリカが持っている明るさや勇気も確かにある。立ち上がれる希望もあると思うんです、私は。

聞き手:悪いとこばっかりみてもねえ。

堤:そうなんですよ。そうだと思います。だから例えばNGOの人達と話しをしていると、こんなことが起きている報告だとか、こんなのがいけないっていうところがあるんですけど、これが悪くてこれはいいよ、っていう風に対立みたいにしちゃうと、またそれも問題でね。

私は日本人として馬鹿にされないようにずうっと突っ張って走ってきたけれども、実はそんな完璧じゃない自分というのもいて、それが許せなかっただけなんじゃないかー
例えば私は9・11の後にすごく思ったのは、アメリカにこんな顔もあったんだっていうのを気づいたときに、自分のことを見たんですね。そしたら私は日本人として馬鹿にされないようにずうっと突っ張って走ってきたけれども、実はそんな完璧じゃない自分というのもいて、それが許せなかっただけなんじゃないかと気づいたんですね。自分の中にあるいい部分と悪い部分の両方を受け入れなければ、大好きなアメリカの悪いところも受け入れられなかったんです。だからイラクにいる米兵が極限状態になってジープで子供ひき殺したりとか、それをニュースが報道しますよね。でもそれは一部であって、人間というのは両方あるんですよ。光の部分と闇の部分と。それを見ないで、じゃあブッシュ大統領殺せばいいとか、じゃあ北朝鮮のあのおかしい独裁者を殺せば何とかなるって思っちゃうと、とても危ない。

聞き手:自分を相対的に見るチャンスだったわけですね。アメリカを発見することイコール自分を発見することになったんですね。

堤:それで自分の弱いところと、いいところあっていいんだと認めたときに、初めてアメリカの真の姿も受け入れられた。そして兵士でも、日本人でも、そういう風に見たら、もしかして希望はあるのかも知れないって。

聞き手:そういうふうに展開できたっていうのがすごいですよね。逆にいうと、自分が頼るべき人が倒れた瞬間だったんでしょうね

堤:そうですねえ。だからディズニーランドのアメリカも好きだし、そうじゃなくて間違いを犯しているアメリカも両方で今はこう、好きなんですね、私。

聞き手:日本では講演をやってこられましたよねえ。講演で逆に見えてきたこと。伝えるという立場だけではなくて、それを通して今度は自分の将来、この先どんなことを堤さんはライフワークとして考えていらっしゃいますか?

堤:講演では教えられることがすごく多いですね。若い人であっても大人の人であっても、70代くらいの人とかね。戦争の話とかされるんですけどね。やっぱりすごく鍛えられるし、質疑応答で色々ディスカッションになったりして、っていうのもありますし、私は独りじゃないんだなあって思えるんですね、講演って。批判もありますけど。

聞き手:批判ってどんな?

堤:某大企業の会長が「あなたはイラクで精神を病んで脱走した兵士が7000人いるって言いますけど、日本では年間で3万人も自殺者がいます。だから7000人なんてなんでもない数字じゃないか」と。もう耐え切れないですね。つまり命が数字になっちゃってるんですね。バーチャルになっちゃってるんです。例えばイラク戦争で、2005年の1月の時点で、アメリカが使った費用が1550億ドルですといいますよね。そうすると「そんなのはね、軍需産業で10年ごとに買い換えなきゃいけないんだから、そんな数字は前から出てるんです」とかね。だからビジネスやってる人達って、命が数字なんだなっていうのがすごくよくわかるんです。そうすると今の日本が見えるじゃないですか。そうなんだ、私たちってそういう時代にいるんだなあって。そういうのもすごくよくわかるし。

聞き手:どこが落としどころなのかって、しゃべりながら思ったりしません?

堤:そうですねえ。ただ私、平和活動家じゃなく、事実を手渡してるだけなんで、こういう風に誘導しようとかって考えないんですね。だから平和活動家って言われるの嫌なんですよ。ジャーナリストはいいとして。事実を渡して考えてほしいだけなんですよ。伝えるというのは私の手段であって、相手がこう考えるようにとは期待しない。だからそれは一方でね、例えばおじさんであっても子どもであっても、必ずわかってくれるだろうって強く信じるんです。今わかってくれなくても、知ることによって考えてくれれば、必ずわかってくれるだろうって。そうやって人間の中にある「善きもの」を信じてるんです。

聞き手:人間の善なるものに呼びかけている。それは必ず信ずるに足るものだという。なるほど。色んなところで講演されてると思うんですけど、和光の授業にも是非来てほしいですね。

堤:是非お声かけてください。母校のためなら喜んで。

聞き手:どうもありがとうございました。

(2005年5月掲載)

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プロフィール

堤 未果(つつみ みか)  ジャーナリスト

和光小、中、高を卒業後渡米。 ニューヨーク州立大学国際関係論学科学士号 ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科修士号取得 国連アムネスティインターナショナルニューヨーク支局員を経て、米国野村證券に勤務中に9・11のテロに遭遇。現在は帰国して執筆、講演活動を行っている。

堤未果オフィシャルウェブサイト

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