卒業生インタビューvol.12

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今回の卒業生インタビューは、現在、イスラエルで演劇集団に参加し注目を浴びている大谷賢治郎さんです。今回のインタビューは、和光高校教員の北山秀樹、石井進でおこないました。

自分にとって“ホーム”って何だろうー国も文化も勿論言語も違う人間たちが一緒になって新しい社会を築くのは可能なのか、を考えたイスラエルの演劇集団

聞き手:高校卒業してからはどんな生活をしてたんですか?

大谷:和光高校を卒業してから、すぐにアメリカの大学に留学し、そこで演技を中心とした演劇の勉強をしました。日本に戻ってから暫くの間は俳優事務所に入りながら、「舞踏」と言われる日本の前衛的な舞踊を学びました。ここ数年は両国にあるシアターX(カイ)という劇場を、演劇活動の拠点として、主に実験的演劇に取り組んでます。舞台以外にも自主映画に出演したりしてます。つい先日、和光の後輩が(それはあとから知ったのですが)監督した映画を撮り終えたばかりです。

演劇活動のみでの生計を立てるのはなかなか難しいので、普段は英語を教えたり、幼児教室で演劇を教えたりもしています。 最近では作詞もたまにしてますね。同級にリトル・クリーチャーズというバンドやってるのがいるのですが、彼らのアルバムで詩を書かせてもらったりしてます。

聞き手:就職する気はあったの?

大谷:なかったですね。卒業したら就職という概念が自分の中に全くなかった。ただ、実際社会に出てみて、自分の好きな道をひたすら進むという理想と現実のギャップはあったりしますけど。和光生の特徴かな、社会への適応性の欠如は。そんなこと言ったら怒られますかね。

聞き手:和光時代の演劇活動はどのように思いますか?

大谷:たぶん、役者になろうって決めた自分に大きな影響を与えていますね。和光では小学校からずっと「劇の会」や「演劇祭」など、演劇の行事がさかんでしたから、ほんと燃えてましたね。自分で本選んだり、演出したり、今思うとある意味、相当好き勝手やらせてもらってましたが。特に中学3年生のときに『カッコーの巣の上を』をやったときは毎晩ジャック・ニコルソン主演の映画を見て、字幕から本を起こして、演出しながら主演するみたいな、かなり無謀でしかも自分本位なことしてましたね。もしかしたら、あのときが自分の演劇活動のピークかも…。

聞き手:現在、イスラエルで演劇集団に参加してますよね。

大谷:イスラエルの演出家の呼びかけで、世界中から役者が集まり、旧約聖書の「バベルの塔」をベースに全員で演劇を創り上げていくという作業をここ2年間してきました。最初からストーリーがあるのではなく、演出家かから宿題をもらって、各自自分の国で創造や稽古をし、それぞれの役者が、自分のストーリーを作り、それを3ヶ月に一度、イスラエルに集まって稽古をし、煮詰めていく、形にしていくという作業でした。世界中のホームレスが今の社会からの脱却を図り、新しい社会を再構築するというテーマをベースにし、自分にとっての「ホーム」とは何か?をずっと探求してましたね。というとかっこよすぎるか…というか、それが僕ら役者に出された宿題だったんです、個人としてのホームや国家としてのホーム。国家としてのホームというのはイスラエルに住むユダヤ人やアラブ人にとっては切実なテーマですからね。日本人にはない危機感を持ってますから。日本人は危機感なさすぎですけれど…。というか、そういうことを気づかされました。これまでに、イスラエルの演劇祭で2回、またドイツで2箇所、公演を行ってきました。また、去年は2月に、両国シアターXにて、ドイツのベルリナー・アンサンブルの演出家、マンフレード・カルゲ氏演出、観世榮夫氏(能役者)主演による、ハイナ・ミュラー作「戦い-ドイツの光景」にも出演させていただきました。実験的なものばかりですね、最近やらせてもらってるのは。

聞き手:その演劇のテーマはなんですか?

大谷:先程も言いましたが“ホーム”ですね。自分にとって“ホーム”って何だろうって。また、国も文化も勿論言語も違う人間たちが一緒になって新しい社会を築くのは可能なのかということにも焦点を当ててました。ユダヤ人とアラブ人、ドイツ人とユダヤ人、白人と有色人種が協力しあって・・・というのは理想なのか、否か。稽古では意図的にそれぞれの国の悪口を言うようなこともしましたね。自分の中に潜在している差別意識や劣等感をみつけるために。やってても見ててもきついものがありましたね。稽古はイスラエルとドイツで行ったのですが、実際に路上でホームレスを体験してみるような稽古もしましたね。

聞き手:今後、日本では上演しないのですか?

大谷: 目下検討中ですが、商業ベースにはのりにくい活動なので…。野外劇なので、それが可能な場所探しをしています。美術館の中庭、廃校のグランドとか。あと、これまでもそうだったんですが、公演場所によって中身が変わる芝居なので、日本公演では新たに日本ヴァージョンを作ることになると思います。イスラエルの現実と日本の現実は全く違うので、イスラエルでやったものを日本でそのままやっても、現実味がないですからね。できるだけ多くの人に見て欲しいな、と思っています。広島や長崎でも上演したいなと個人的には思ってます。これも和光の平和教育の影響ですかね…。

聞き手:様々な人との関わりを通して、どのように自分が成長してきたように思いますか?

大谷:高校生の頃は、自分が中心で動かしている、という自己本位な思いが強かったのですが、その後留学して思い通りにいかないことにぶちのめされたり、様々な人と関わっていく中で、ほんとに色々な人に支えられてきて、自分の活動が成り立っていると思えるようになりました。「おかげさま」って本気で思えるようになりました…ん、なったかな?

聞き手:和光生へのメッセージをお願いします。

大谷:そんな、メッセージなんて言える立場じゃないですよ。頑張って生きてください。

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プロフィール

大谷 賢治郎(おおたに けんじろう) 俳優

1972年生まれ。1976年和光鶴川幼稚園入学、和光高校卒業。 幼稚園の運動会で「猿蟹合戦」を演じ、演劇に目覚める。中学の演劇祭卒業公演では「カッコーの巣の上を」を演出、主演し、血が騒ぐのを体感する。高校ではバンド活動と演劇の授業に傾倒。1990年卒業と同時に渡米。 カリフォルニア州モントレーのる短大に学び、その後サンフランシスコ州立大学芸術学部演劇学科俳優コースに編入。1995年卒業後帰国し俳優事務所に所属。テレビやコマーシャルの世界に関わるが、大野一雄氏のもとで舞踏を学び、芝居の創作を手がける。2000年から両国のシアターXを中心に舞台創作活動を行う。

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