「悲しいことから救ってくれるのは、人だよ」 ~温かい人と人の触れ合いを描き出した朝ドラ「ひよっこ」~

和光小学校 校園長ブログ

先月、NHKの連続テレビ小説(最近は朝ドラで通ってますね)「ひよっこ」が終わりました。脚本を書かれた岡田惠和さん、音楽担当の宮川彬良さんは、ともに和光の卒業生です。

岡田さん脚本の朝ドラは、2001年の「ちゅらさん」、2011年の「おひさま」に続き、三作目となります。NHK朝ドラでは初めて沖縄を舞台とした「ちゅらさん」では、底抜けに明るい沖縄の人たち、ヒロインが東京で暮らす一風館の人情味溢れる人たちが新鮮でした。

今回の「ひよっこ」のヒロインみね子は、1960年代の高度成長期、北関東の農村の高校生としてスタートします。1964年の東京オリンピックの年、私は小学校1年生でしたが、みね子たちは高校3年生、オリンピックと同じ聖火リレーを村のみんなで実現させるため青年団に働きかけます。そんな生徒たちの熱意につきあってくれる高校の先生たち、そして東京へ集団就職することに決めたみね子たちの就職先を親身になって探してくれる担任の先生・・・・和光の教師たちの姿と重なって見えたのは私だけでしょうか。

主人公みね子は、ドラマの中でも「私っておもしろくないですか?」と尋ねるシーンがあるほど、ごくふつうの女の子です。それでも特に後半部分で「ひよっこ」の世界にぐいぐい惹きつけられるのは、人を信じ誠実に生きているみね子を演じる有村架純さんの演技力と、みね子をとりまく人たちの温かさがていねいに描かれているからではないでしょうか。

自分よりも家族のこと、周りの人のことを第一に考えて生きてきたみね子ですが、時に力強い独白が、みね子を支えているものを感じさせます。

家の状況から恋人と別れなければならなくなったことを振り返って言ったセリフ「自由って好き勝手ってことですか?自由って自分で選ぶってことじゃないですか。人から見てそんなんでいいのか、っと思われても、本人が選んだんならそれは自由でしょ。自分で選んだんです。自分で決めたんです。」

勤め先のレストランの一人娘由香が父親であるシェフとの関係がこじれたままになっていることに対してみね子が由香に言うセリフ「親から何かしてもらうことを期待している、それが子ども。自分から親のことを考えて動く、親を許す、それが大人だと思う。お父ちゃんを許そう、そう思ったとき、子どもじゃなくなったんだな、って思いました。」

どちらも独り立ちして生きていくことを選んだみね子の決意がこもっていました。

みね子の叔父、宗男のことばも胸を打ちます。東京に出稼ぎに行ったみね子の父が失踪し、その父が記憶をなくした状態で見つかります。それでも元の家族の所に戻って生活を取り戻そうとしている、そこに宗男は「悲しいことはふってくるみたいにいきなり起こる。どんなにきちんと誠実に生きてても、悲しいことややなことはいきなり起きる。どうしようもなく起きるんだ。でも悲しいことから救ってくれるのは、人だよ。人間だ。立ち直らせてくれるのも人だよ。だから誰かに助けてもらったら誰かを助ければいい。それでいいんだ。人を救うのは人だよ。みんながそうすりゃ世界はキレイに回っていくよ。」と話しかけます。人は人の中で生きているのだということが私たちに突きつけられ、だから何があっても大丈夫、という安心感を与えてくれます。

ビートルズに夢中になっていた宗男が、ツイッギーが来日しミニスカートブームが巻き起こった事に対して言ったセリフは、「ミニスカートは、女の人が自由になるってことだよ。解放されることなんだ。それまで縛られていた女の人が解放されるということだよ。これまで、はしたないとかみっともないとか言われてたことから解放されるってこと。女の人が変わるということは、男も変わらないといけない、ってこと。男も、女はこうあらなければいけない、っていうことに縛られているからね。」

まだまだ女性が男性と対等ではなかった時代であることを考えると、とても斬新で印象的でした。

農家の新しい収入源として花の栽培を始めようと提案する時のことばも、女性の生き方が変わりつつあること、平和な時代がやってきたことを示唆しています。「花はね、これからの仕事だよ。・・・・ここらの人間にしてみると、花は葬式の花輪は別にして、野に咲くものだし、飾るにしたって買ったりしない。東京はその花の咲く野っ原がどんどんなくなってるんだ。あれだけの人が住むところ、仕事をするところがいるから。米は大事なもんだ。生きるために必要なもんだ。生きるってことの象徴のようなもんだ。だから、それを作ってるっていうのは誇らしいことだ。花はその先の象徴だ。平和の象徴なんだ。楽しんで生きるってことの象徴でもある。花は女の人が買うもんだ。女の人は花が好きなんだ。これからは女の人が自由に好きな物を買う時代が来るんだ。だから花なんだ。」

みね子といっしょに東京に出てきた時子は女優を目指していました。ツイッギーコンテストに出ることになった時子に、女優の川本世津子が「これからは女の人にどう支持されるかが大切。今までの、男の人たちがお気に入りの女の子像じゃなくて、女の人が選ぶスターが求められるんだ。」とアドバイスします。そして時子がコンテストで訴えたのは、「日本中の、いや世界中の女の子たち、女性たち、いろいろたいへんだよね、女として生きていくのは。でも、でも、女の子の未来は私にまかせて!みんな、私についてきて!」 時子はみごと、優勝しました。

フェミニズムという考え方が日本で広がっていくのはもう少し先です。が、確かに新しい時代を、女性はもちろん、男性も手探りで求めていた時代でもありました。女性が解放されるというのは、男性もあるべき姿から解放され、自由に生きることができるということなのですから。

そのことは、最終版でみね子の恋人、秀俊がみね子の両親に対して言うセリフにもはっきりと表れています。秀俊は「みね子さんと結婚させて下さい。必ずぼくと幸せに生きます。幸せになることをあきらめません。ぜったいに。お願いします。」と言うのです。

今でこそ「ぼくに下さい」などと女性の両親に言うことはなくなったでしょうが、まだまだ女性は家から家に嫁ぐものという考え方が強かった時代です、男性は女性を幸せにする、女性は男性に幸せにしてもらう、というのが当たり前でもありました。その時代に、“ぼくと幸せに生きます。幸せになることをあきらめません。”とは、なんて素晴らしいことばなのでしょう!

たくさんの感動を与えて下さった「ひよっこ」、脚本を手がけられた岡田惠和さんが和光学園で学ばれたということもとてもうれしく誇らしく思っています。

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