「他者との出会いを通じて自分自身を見つめる」 ~和光中学校副校長 高橋智佳子先生が語る和光中学校の学び~

和光小学校 校園長ブログ

2学期最初の授業公開の後、教育講座を開催しました。今年4月から和光中学校の副校長になられた高橋智佳子先生をお招きして、「新学習指導要領と和光の教育」というテーマでの北山との対談形式で、和光中学校の教育について語って頂きました。

長年国語の教師として教壇に立ってこられた智佳子先生(和光には高橋先生が何人かいらっしゃるので、このように呼ばせて頂いています)からは、授業の中で子どもたちが文学作品とどう向き合ったかということも具体的にお話し頂くことが出来ました。

 

1.和光中学校の行事、その中で育まれるもの

今年できあがった和光中学2年生の「秋田学習旅行」のDVDは、和光小学校でも6月に上映会を行いましたが、この日は、昨年、秋田ケーブルテレビが製作したDVDを観て頂きました。

昨年は和光中学校の「秋田学習旅行」40周年であり、長年中学生たちを受け入れて下さってきた農家の方々の思い、中学生たちの農業体験と農家の“父さん”“母さん”との交流が描かれ、11月の文化祭の時の発表会でも涙ながらに語る中学生の姿に、秋田での日々が子どもたちに残したものの大きさが、観ている私たちにも迫ってきました。

映像の中で発表会の時に泣いていた男子生徒の姿は、クラスの仲間も初めて眼にする姿だったと言います。

学校では決められた授業の形がありますが、秋田では日常から離れ、広大な自然の中でのんびりした時間が流れていきます。農家の方々、現地「わらび座」との出会いもありますが、そこでの仲間の姿、教室とは違う姿を発見することが大きいのだと智佳子先生。これは体験した者にしかわからない出会いである、と。

秋田の大地でいっしょに働く3日間はいいところも、そうでないところも表れ、ありのままの姿を知ることになります。そこから自分を見つめる、そういう瞬間がいっぱいある、というのです。お互いに応答し合う関係の中で育まれるもの、そういうのものを守っていかなければいけないことに気が付きます。映像を観た私たちもそのことに納得しました。

もう一つ、和光中学校の大きな行事である館山水泳合宿、太平洋という大自然の中で1年生は3㎞、2年生は6㎞の遠泳に挑戦し、3年生は指導員として下級生を支えていく、そしてそこには毎年100名を超える卒業生コーチたちが関わってくれているのです。

天候によっては過酷な状況に置かれることもあるこの館山水泳合宿は、今年で68年目を迎えます。近年、海の状況、生徒達の体力などから安全を最優先に、と考え、遠泳の距離が縮められました。それでも大海原を泳ぎ続けるという課題に挑戦するのは、中学生にとって大きな挑戦であることに変わりはありません。

コーチとして参加して下さるのは、下は高校生から上は60代の方まで幅広い年齢層の卒業生の方々。新年度が始まる前からコーチ委員会が動き出し、平日の夜の会議、6月になると休日にはプールでの泳ぎ込み、と学校の動きと平行してコーチの方々の組織がタテヤマに向けて着々と準備が進められていきます。

常にいのちと向き合わなければならないタテヤマを安全に行い、生徒一人一人が自分の目標を達成するためには、先生たちはもちろん、コーチたちの存在なくしてはできないことです。

合宿とその前の取り組みにも時間を割いて下さるコーチのみなさんは、どういう思いで来て下さるのでしょう。智佳子先生は、自分がもらった、ことばにできない何かを伝えよう、という思いを持って下さっているのだと言います。教師と生徒だけでは生まれないもの、一生の大切な思い出という、宝物のようなものが、卒業生の人たちの中には何十年経っても深く残っている、というのです。そしてそれが深いところでつながっていきます。お互い、人って信じるに値するものであるということ、そのことが何ものにも代え難いものだということを、卒業生であるコーチのみなさんは身体の中に刻まれているのでしょう。

準備は確かにたいへんで、5泊6日の宿舎での生活は縦割りで営まれ、そこでのルールは自分たちで決めていきます。「総務」「班長」に選ばれた人たちが、話し合いを重ねながらタテヤマに向けての準備を進めていきます。まさに、自治の力が育まれていくのです。

 

2.和光中学校の学び

和光中学校の学習で一番大切にしていることは、他者との出会いであり、それを通じて自分自身を見つめていくことだと言います。どの教科でも、お互いに考えていることを発信しあうことを意識した授業が組まれます。応答し合うことで学びは発展していくのです。智佳子先生は、失敗しながら、調整しながらやっていく、その過程にこそ学びがある、そこにしか学びはない、と言います。

今はスマホで調べればすぐにわかる時代になりました。でもそれで“わかったつもり”にならない、実際にやってみる、納得がいくまで調べる、それこそが学びである、というのは和光学園の一貫しているところです。

子どもたちが何を考えたのか、何を疑問に思ったのか、答えを探っていく、そして答えは一通りではない、これは小学校でももちろん大切にしていることです。 国語の教員である智佳子先生は、ことばの教育を積み重ねた3年生が製作するキャッチコピーを紹介してくれました。

「世界でひとつだけの花」の歌詞から自分の主張として「世界でNo.1の花」というキャッチコピーを作った人、その内容には本音としてはどうなんだ、と、中学生らしい強烈な主張が含まれています。

携帯電話を「彼」と擬人化して「彼」に振り回されている自分たちの生活をちょっと醒めた目で眺めたキャッチコピーに表現した人。今や中学生にとってスマホの問題は大きく、そんな自分たち自身への警鐘とも感じられる作品でした。

全員が自分の主張をキャッチコピーを含む画面で表現するこの取り組みは、友だちの新たな発見にもつながります。そして、和光小、鶴小から内部進学してきた人たちは、表現することに抵抗がない、と感じるそうです。

 

この講座に参加された3年生の保護者の方から、以下のような感想を頂きました。

“国語の実践紹介でみせていただいたキャッチコピーの作品集、各々が自分の思ったことをストレートに表現できるというのは、自分の考えが周りと違っていても大丈夫という安心のもとでなければなかなかできないこと。それを、あれだけ大胆に表現している中学生の姿に感動しました。自分が受け入れられている実感があるから、違いのある相手のことも同じく受け入れられる。それぞれの「個」をそのまま受け止めて、自分を出せる場というのは、大人だけでなく子どもたちにとっても今やとても貴重な場だと思います。それが一日の大半を過ごす教室にあるということがとても幸せですね。”

 

もう一つ、国語の授業での取り組みを紹介して下さいました。

2年生では別役実の作品を読みます。教科書には1編入っているだけですが、いくつかの作品をまとめて読むことで見えてくるものがあるだろう、という考えで、『なにもないねこ』『愛のサーカス』などの5つの作品を読んでいます。

新学習指導要領では、「主体的、対話的で深い学び」が求められていますが、教科書をとにかくすすめていかなければならない、という状況では、とても深い学びにはならない、と智佳子先生は言います。和光中学では深い学びを追求するために時間をかけてじっくり読む、ということを追求しているのです。

2年生で読む別役実の5つの作品には、「優しい」「寂しい」「幸せ」というキーワードが共通して出てきます。そこを深めることがこの単元の目的です。高度な課題ですができる、と智佳子先生。

具体的な取り組みとして、『なにもないねこ』の最後の6行を創作し、クラスの仲間が書いたものを読みあい、いいと思うものに票を投じるという授業を紹介して下さいました。どの作品にも必ず票が入るのだそうです。

お互いに書いたものを読みあい、すごい!と思い、そこから学ぶ、そういう関係が生まれていきます。もちろん作家が書いたものもあるのですが、それが中学生が書いたものよりいいかというと、必ずしもそうではない、と言います。

作品に書かれていることを根拠にしながら豊かな発想を広げていき、お互いにどう感じたかを大切にします。

生徒たちが書いた作品(最後の6行)と、その人の作品に票を入れた人たちからの「一言コメント」を資料としていただきました。自分にはない発想、感性に対する感動が素直に表現されていて、仲間のコメントを読むことでお互いを理解することが深まっていくのだろうと感じます。

これは小学校でもいろいろな教科の学習、行事の取り組みや振り返りなどで行っていることで、こういう積み重ねが“対話的”で“深い”学びとなり、さらに仲間とのつながりを豊かにしていくのだろうと思いました。

 

3.新学習指導要領と和光の学び

文科省による新学習指導要領の実施を控え、和光の各校の学習内容、授業時数など、どのようにしていくか課題になっています。

和光小学校は和光鶴川小学校といっしょに10年に一度、教育課程の改訂を行っており、現在は「2016年度教育課程」による教育作り、学校作りを進めているところです。両小学校による教育課程は、5年に一度、中間総括を行っています。ちょうど中間総括を行う2020年度が、新学習指導要領実施の年になりますので、それに合わせて和光両小学校では具体的な内容をどのようにしていくか、学校での生活時程の見直しを行うのかどうかということも含めて、来年度は検討していくことになります。

同じように和光中学校も新学習指導要領を見据えた教育課程作りが求められますが、和光で大切にしていることが、それによって変わってしまうことがないようにしたい、といううのは和光学園のどの学校も同じことです。

さて、ご存じのように、小学校の新学習指導要領では「外国語・英語」が5,6年生では教科として、3,4年生では「外国語活動」が導入されるということが打ち出されています。

前回の指導要領改訂で高学年での「外国語活動」が打ち出されたときは、和光小学校は「異文化国際理解教育」としてその中に「外国語」を含んで学習することとしてきました。

今回は「教科」として打ち出されていることもあり、外国語、英語を専門とする学内、学外の何人かの方々から私たちも学びながら、子どもたちにとって意味のある学習にするためには何を大切にするか、を一番に考えてカリキュラム化に向けて準備を進めています。

小学校で導入される「外国語・英語」について、卒業生を受け入れる側の和光中学校のお考えを伺いました。

中学校の英語は文法学習が中心になります。公立校で教科書を使って学習したという智佳子先生は、和光中学の英語はすっきり整理されていてわかりやすい、と言います。一方で、なんで英語を勉強するの?と思う生徒もいる中で、学びたいと思える学習内容を準備することも求められています。

和光中学、高校では同じ教科の教員たちが学習内容を議論する教科サークルがあり、そこでは英語は伝えたい相手がいることなく学びが成立するのか、ということが語られているといいます。

言語の学習というのは、自分のこと、自分たちのことを伝えたい、ということが学びたいというモチベーションになります。相手は外国の方でなくても、友だちどうしでもいいのです。陥ってしまってはいけないのは、形式的なアクティビティやゲームをとにかくやる、ということ。ALTに来てもらえばいい、というだけでは飽きてきます。これは他の学びとも共通することで、対話すること、発信することとして英語をきちんと位置づけていかなければいけない、というのです。 和光高校生は比較的海外留学を目指す人が多い、というのは私の印象でもあります。毎年ロータリークラブから交換留学生プログラムの募集がありますが、東京地区で10人前後の募集の中に1人か2人、和光高校生が選ばれることがよくあります。私の長女が和光高校の時にこのプログラムに参加したときには、和光高校からは3人選ばれました。今年も、都内8人のうち2人が和光高校生です。その中の1人は決して活発だと思われる人ではなく、いろいろな世界を見てみたい、という思いを持ったので応募したそうです。

人との出会いの中で自分自身を成長させていくことができることに確信を持ち、疑問を持って向かっていこうとする“学び”への姿勢が、和光の教育の中で育っているからに他なりません。

小学校でも、学びたい、もっと知りたい、と思えるような「外国語・英語」の学習を作っていきたい、と思います。

 

この後、ご自身も和光小、和光中の教育を受けてこられた方などからの質問をいただきました。時代とともに変わってきたもの、変わらず続けているものなどの話もあり、それでも和光の教育の柱になるものは変わらず持ち続けていることを確認しつつ、課題はしっかり見つめて取り組んでいくことが求められているのだと感じました。

智佳子先生の子どもたちを見つめる温かいまなざし、教育への深い情熱を、多くの保護者のみなさまとともに受け取ることができたこと、とてもうれしく思っています。

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