「子どもの権利条約」30年の年に

グランドの桜はまだ少し花を残していますが、いちょうの木にはみずみずしい薄緑の葉が芽吹き、まぶしい日差しの中で子どもたちが元気に駆け回っています。
新年度が始まって2週間、新1年生が入学して10日が経ちました。
4月8日の始業式には、まだ入学式前なので2年生以上の子どもたちに、以下のような話をしました。
今日から2019年度が始まります。みなさん、一年ずつ学年が上がりました。
あさっての入学式で新1年生が入ってくると、新しい1年生から6年生までがそろいます。
みなさんは、担任の先生が誰になるのか、ドキドキしているのではないでしょうか。この後の発表を楽しみにしていて下さい。
また、この後、紹介がありますが、新しい学年の初めにお別れする人、仲間に加わる人がいます。新しい出会いも楽しみですね。
さて、今年、2019年がどういう年かということをお話ししたいと思います。
今年は、みなさんにとても関わりがある「子どもの権利条約」ができてちょうど30年となる節目の年です。
「子どもの権利条約」ということばを聞いたことがある人はいますか?
「権利」というのは何かをしてもいい、またはしなくてもいいということ
「条約」というのは国と国との間で決めた決まり、約束、ということです。
「子ども」とは、18歳になるまでの人たちなので、高校を卒業するまでは「子ども」として、この「子どもの権利条約」に書かれていることの対象となります。
どうしてこの「子どもの権利条約」ができたのか、というと、昔は戦争がたくさん起こり、多くの子どもたちが犠牲になりました。子どもが戦争を始めるわけはないのに多くの子どもたちが犠牲になってきたのです。
また、子どもが十分に守られることがなく、小さいうちから長い時間働かされる、ということもあって、命を落とすこともありました。
子どもたちを、おとなと同じように、ひとりの人間としての人権を認め、大きくなるまで守っていくことが出来るように、という願いを込めて作られたのが「子どもの権利条約」です。
ここに書かれている“子どもの権利”は、大きく分けて4つあります。
○生きる権利:すべての子どもの命が守られること
○育つ権利:もって生まれた能力をじゅうぶんに伸ばして大きくなることができるように、病気になったらお医者さんに看てもらったり、学校へ行ったり、暮らしていくための助けを受けること、そして友だちと遊んだりすることができること
○守られる権利:暴力を受けたり、むりやり働かされたりすることがないよう、守られること
○参加する権利:自由に自分の意見を言ったり、自分たちの意見を伝えるためにグループを作ったりできること
こんなの当たり前だ、と思っていると思いますが、この「権利」が守られないことが起こることもあります。
みなさんもニュースなどで「虐待」ということばを聞いたことがあるでしょう?
「虐待」というのは、家族など身近な人から暴力などを受けることです。
今年の1月には、千葉県で親から「虐待」を受けて、4年生の女の子が命を落としました。
「子どもの権利条約」第19条には、虐待を受けたすべての子どもを守るための仕組みを作らなければならない、ということが書かれています。
それでも、暴力によって傷ついたり命を落としたりする子どもが後を絶ちません。私たち大人は、そういうことが起こらないようにするための努力を続けなければならないと思っています。
みなさんは、誰かから暴力を受けたり、いやなことを言われたりすることはあるでしょうか?
そういう、痛い思いや、いやな気持ちになることをされなくてもいいという権利を持っています。もしそういうことがあったら、「やめて」と言って、逃げること、そういうことがあったということを誰かに話すことが大切です。
たとえ相手が身近な人でもそうです。
みなさんは、自分のことを守る権利があるのです。
今日は「子どもの権利条約」の話をしました。みなさん一人一人にとても関わりのあることなので、調べたり考えたりできるといいと思います。
新しい学年で、たくさん学び、たくさん遊んで下さい。(これも「子どもの権利条約」に書かれていることです。)
4月の各学年の親和会でご挨拶をさせていただいたとき、始業式の話をしました。
「子どもの権利条約」ということばを聞いたことがある人は、高学年に1~2名いましたが、ほとんどの子どもたちにとってはなじみがないことばかもしれません。
日本がこの条約を批准したのは制定されたから5年後の1994年、158番目となります。
そういう意味では、まだまだ日本の子どもたちは、ここに書かれている「権利」を持った存在であるという意識を、大人が持ちきれていないのかもしれません。
“しつけ”と称した暴力、暴言が、子どもが最も安心して過ごすことができるはずの家庭内で行われていること、そのことで傷つき苦しんでいる子どもたちがまだまだいるだろうと、昨今の児相への通告数の増加からも予想されます。
子どもに関わる仕事をしている私たちが、まずその自覚を持っていくことと同時に、子どもたち自身に「権利」の意識を持つことができるような学習を進めていかなければならないと思っています。
「子どもの権利条約」30年の節目の年に、保護者のみなさんと共に考えていきたいと思います。