壁にぶつかることがあっても、 自分が好き、他人を大切にすることができる、という生き方をしていれば乗り越えられる。 ~シンポジウム:和光学園で育つ子どもたち~

和光小学校 校園長ブログ
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毎年6月中旬に行う休日授業・保育公開の日は、1,2校時の授業を参観していただいた後、3,4校時は幼稚園、小学校の保護者のみなさまには、校長講演、シンポジウムに参加して頂いています。

シンポジウムは、卒業生や卒業生父母の方に幼稚園、小学校の頃の学びと今の生き方について語ってもらったこともあり、昨年は幼稚園、小学校の両教務主任に幼稚園、小学校の教育について子どもたちの姿を具体的に語ってもらいました。

今年は、和光中学校の副校長、高橋智佳子先生と和光高校の副校長、梅津靖先生に来て頂き、和光中学、和光高校の教育を語って頂きました。

題して「和光学園で育つ子どもたち」

先日、東京私立初等学校の一斉研修会で「Most Likely To SUCCEED」(2015年米 ドキュメンタリー)の上映がありました。“子どもを点数のデータと見なす教育システムの中では、人間が本来持っている自らどん欲に学ぶ能力が潰されてしまっている”ことに警告をならすという意図で製作されたと言いますが、私たちはずっと以前から“子どもが自ら学ぶ意欲を持つ”ことを大切に教育作りを進めてきました。幼稚園から小学校、中学、高校、大学と和光学園で大切にしている教育の柱はそこに通じていると思っています。

今回は、和光中学校、和光高等学校ではどのような教育が行われ、どのような子どもが育っているのか、このシンポジウムの中で浮かび上がってくれば、と思いました。

 

和光中学校の教育目標は「共に生きる」。高橋先生はシンポジウムのレジュメに、“自分を誇りに思い、他者に敬意を払う人であってほしいという願いの下に”というサブタイトルをつけました。

最初に、卒業生のメッセージを紹介して下さいました。

「社会科、捕鯨の授業で、視点を変えると物事の見え方ががらりと変わるということを学んだ」「自分の学びの中に仲間がいなかったことはない」「赤いバラには憧れるけれど自分は黄色いバラでいい、とやっと気づくことができた」・・・・

授業や行事の中で、いろいろな人の気持ちが自分の中に住んでいると実感できる

のが和光中学校で学ぶ3年間だと、高橋先生は言います。

和光中学校は4月、入学式の直後に「新入生歓迎(オリテ)運動会」を行います。2年生、3年生は三学期から準備を進め、3年生全員が必ず何かのリーダーになるそうです。

4つのブロックに分かれて優勝をめざして闘いますが、この時期に全校で運動会を行うのは、新入生が早く仲良くなれるように、学校が安心できる場所であるということがわかるように、という目的があるからです。外の小学校から来た人は知っている人が誰もいない、ということもあります。そんな新入生に、学年を超えて多くの人と知り合い、関わり合っていくことは、これからの中学校生活に希望と期待をもたらすことにつながるのではないか、と和光中学校は考えています。そして3年生にとっては2年生、1年生との関わりの中で自分自身を見つめることになり、「“ひとのために”行動する自分と仲間に出会う」、「3年生が3年生になる行事」であると高橋先生は言います。

オリテ運動会を振り返って書く感想文も、学級通信でクラスの仲間と共有します。この感想文の中にも、自分ががんばったこと、やりきれなかったことと共に、取り組みの中で発見した仲間のステキな姿が書かれています。

最後は、国語の授業のことを話して下さいました。

今も国語の授業を持っていらっしゃる高橋先生は、「大切にしているのは、互いの学びを共有すること。応答する空間の中で、自分もまた応答したいと思うようになるのです。」と切り出しました。

和光中学校の2年生は、9月末秋田へ学習旅行に行きます。5泊6日の学習旅行では、お世話になる農家の方々と農作業などを体験させて頂きながら濃密な時間を過ごします。こうしてできた秋田の“父さん”“母さん”“じっちゃん”“ばっちゃん”との絆は、子どもたちは大人になっても心のひだに大切にしまっておきたくなるようなものとなります。

そんな秋田学習旅行を終えた2年生は「詞書」をつけて短歌を作りました。そして友だちの短歌に「この一首を選んだ鑑賞文」を寄せます。著作権の関係で短歌も鑑賞文もご紹介できないのが残念ですが、「秋田」を想って詠んだ短歌も、友だちの“ことば”に寄せる率直な感想も、多感な思春期の子どもたちがこんなにまっすぐに自分の気持ちを表現できることに驚きます。和光小出身の子どもたち、鶴小で担任をしたことがある子どもたちの顔が思い浮かび、胸が熱くなる思いがしました。

 

梅津先生は、和光高校のカリキュラムの特徴を話して下さいました。

和光学園は1933年に小学校が誕生し、戦後になって中学、高校、幼稚園が今の世田谷キャンパスにできました。子どもたちの知的探求心を刺激しながら、学びに向かう教育は、受験のための知識詰め込み型の教育とは対極に位置します。受験競争が激しくなってきていた1960年代当時、受験のための教育は本来の教育の目的とは違う、子どもたちが活き活きとした学校生活を送ることが出来るような教育作りこそ、和光学園がめざすところである、と考え、“教育界の巨人”と謳われた梅根悟氏を初代学長に迎え、和光大学が創設されます。

有名大学にできるだけ多くの生徒を進学させようと、授業時間を多く取っている他私学が多い中、和光高校はいわゆる詰め込み教育ではなく、自分の考え、意見を持ち、それを自分のことばで表現できることを大切にしていると梅津先生は言います。

和光高校は、選択授業が多いのも特徴の一つです。生徒の興味関心に基づいて授業を“選ぶ”ことができるように、ということを大切にしています。

また、多くの私学が、理系と文系のコース制を取っていますが、和光高校はそのような分け方はしないので、進路変更が可能です。

1年生は週に2時間、芸術科目の選択授業の時間があり、その他は必修ですが、2年生、3年生では自由選択が10枠(1枠は2時間分)あり、その中から6枠取れば卒業できることになっています。必修選択は2年生で1枠、3年生で1枠です。必修選択となると、やりたくないのに取らなくてはいけなくなる、というのが自由選択が多い理由だそうです。

2年生の必修選択(火曜日の5,6校時)の講座では、10月に研究旅行に行きます。2018年度は全部で10講座あり、日常の授業の延長で組まれる研究旅行先は全国各地です。いくつかの講座名と研究旅行の目的を紹介します。

<日本文学研究>目的:作品などの舞台となった地、作家ゆかりの地を訪れ、エッセイや作品などを創る文学紀行。伊勢神宮・大阪・小豆島など、文化や文芸と関わりのある地に足を運ぶ。

<ひととことば>目的:シマ(奄美大島)で出会う人たちと親睦を深める。シマユムタ、生活、文化を尋ね、聞き書きを完成する。旅行のまとめをシマに返すとともに、伝承する力をわたしたちがもつ。

<農と地域>目的:鳴子の米プロジェクトについて学ぶ。被災地の地域作りについて学ぶ。農作業を通し、人とのつながりを学ぶ。

<労働と福祉>目的:野宿者問題、福祉の問題をフィールドワークを通して学習する。また、大阪の商店や観光地で、仕事の体験をする。

<生物研究>目的:栃木県日光市の奥日光地区・足尾地区にて、シカによる植生破壊の実態とシカの保護管理、サル害の実態とサルの保護管理、足尾銅山の煙害による森林破壊とその再生事業について調査・研究を行う。

<版画>目的:札幌の芸術の森センター版画工房にて、普段なかなか制作できない大型作品(木版画、裏彩色)を制作する。最終日にはセンター内か札幌市内の美術館にて作品鑑賞。制作した作品は、文化祭美術科作品展で展示。

他に、<基地問題研究><日本古代史研究><戦争と史跡><科学技術と生活><絵画>の講座があります。

梅津先生が準備して下さった資料の中に、「フィールドワーク一覧」がありました。必修選択、自由選択の授業で行ったフィールドワークは、2018年5月には9回、6月には17回・・・と、授業内容ごとにさまざまなところでフィールドワークを行っています。座学だけではなく、現場に出かける、本物に触れる、プロに出会う、実際にやってみる、などなど、高校生でも“体験する”ことで学びが深まっていくことをめざしています。

和光高校のもう一つの特徴に、「3年生特別講座」があります。3年生の3学期は、大学受験の時期であり、多くの高校では授業がなくなります。和光高校も、3年生は2学期末で授業が修了しますが、近年はAO入試、推薦入試で進路が決まってしまう生徒が9割、一般受験をする生徒は1割なのだそうです。そこで、5人以上の生徒がこの先生にこのような授業をして欲しい、という申し入れをしたら「特別講座」が設けられます。

たとえば、東洋の医学と栄養学を学ぶという「東洋医学と栄養学」、K-POPの歌詞を覚え、カルグンムを意識して踊るという「韓国文化を知る」、英語を通して世界のテーブルゲームをするという「Playing GAME with Jonathan!」、生物学の視点から男女の違い、恋愛、コミュニケーションについて学ぶ「根源から学びたい恋愛とコミュニケーション」、ドイツ史などのヨーロッパ史についてより深く学ぶ「ヨーロッパ史リターンズ」、ハラルフードを創り、イスラム教などの文化を学ぶ「ハラルフードを作って食べよう」(講座名はせいとが考案します)・・・・・テニス、バスケットボール、手芸、調理、などクラブ活動的なものも含め、2018年度は30講座が開設されました。

 

フロアーから質問や感想を寄せて頂いた後、最後にお二人からみなさんにお伝えしたいこと、を話して頂きました。

梅津先生からは「和光高校の教育で伝えたいことがまだまだたくさんある、生徒の自治についても知って頂く機会があれば」、高橋先生からは、「壁にぶつかることはいっぱいある、でも自分が好き、他人を大切にすることができるという生き方をしていれば乗り越えられる」というメッセージをいただきました。

 

高橋先生、梅津先生のお話を聞き、学びに向かうということはどういうことか、そのために教育内容、授業のあり方はどうあるべきか、とうことを考えさせられました。

そして、和光幼稚園、和光小学校、和光中学校、和光高校と“和光の学び”の中で育っていく子どもたちのことを、もっともっと知りたくなりました。

 

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