今年も「ほんもの」を追求した「食」の学習 その2 ~試作を重ね“ほんものの団子”をとことん追求して~

和光小学校 校園長ブログ
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52組のテーマは「団子」に決まり、さっそくだんご情報が届き始めました。担任から渡された「だんご情報シート」には、“みつけた・わかった情報・写真・ラベル・チラシ・絵・地図など”と書かれていて、「だんご粉」で作ってみたWくんは、作ったときの様子とともに「だんご粉」の袋を貼り付けています。学級通信には<この「袋」の中にいろんな情報がつまってるぞ。>との呼びかけ。だんごの由来を調べた、いろいろなだんごの種類を調べたなどの他に、食べ比べをしたという情報、お母さんが、かつてみたらし団子の食べ歩きをしていたという情報まで集まりました。<Sさん、Oくんからは食べ比べ情報。これは重要。どこでどんなだんごを売っているか?場所、値段、味。材料は何か?(食べ歩きをしたという)Fさんのお母さんのNo.1だんごはどこか聞いてみたいねぇ。>(学級通信No.38)その後も次々と情報が届き、Oくんがお店でもらってきた冊子に載っていた「団子はなぜ“だんご”というのか」という情報と併せて、担任からは『人と土地と歴史をたずねる和菓子』(中島久枝著 柴田ブックス)から「団子歴史ばなし」を紹介しています。

1学期末、学校から歩いて行けるところに数件の和菓子店があり、そこにグループに分かれてインタビューに行きました。グループごとに画用紙1枚に1時間でまとめる、次の日各グループ2分以内で発表する、という課題が出されました。<同じお店で同じ人に聞いていてもグループごとに聞いてきたこと、中身がちがったね。行ってないお店、売り切れだった団子の情報もおたがいに聞きあうことができた。近所なのでぜひ再チャレンジしてみてほしい。>(学級通信No.45)夏休みを前に、いろんなお店の団子を食べてみてプロに聞いてみるということを呼びかけました。本来なら団子の試作をする中でプロとの出会いを作りたい、というのが担任の想いですが、今年はそれがかなわず、まずは食べてみる、から始まります。

そして夏休み、3週間しかない短い夏休みでしたが、それぞれの団子研究はいつものように様々なテーマで、友だちの発表を聞きあっての感想も中身に踏み込んだ深いものもあります。だんご粉、上新粉などを使って団子を作ってみた、団子屋めぐりをしてインタビューした、団子の串に刺さっている個数の違いを調べた、団子づくりでの水とお湯の違いを試してみた、東のみたらしと西のみたらしの違いを調べた、団子について100人にインタビューした、みたらし団子の歴史を調べた、羽二重団子の歴史を調べた、などなど。

8月に文科省から「感染予防をした上で通常の教育活動を行う」という内容の通知が出され、2学期になってようやく団子づくりをすることができるようになりました。(残念ながら緊急事態宣言が出ている間は調理実習を行うことができなくなっています。)団子屋さんに聞くと、ほぼすべて上新粉で作っていることがわかったので、「上新粉を使ったみたらし団子」が条件となりました。夏休み発表の中ではだんご粉の方が上新粉より作りやすく簡単でおいしいという人が多かったのですが、団子屋さんはなぜ上新粉で作っているのでしょう。<それはどうやら「作り方」によるみたいだね。ゆでるのか、蒸すのか、つくのか、水で冷やすのか冷やさないのか。そして粉は自作するのか?>(学級通信No.49)試作を前に課題が出されました。

1回目の団子づくり。作ったものを4人の教員に食べてもらって評価してもらいます。評価項目は①色・形(団子の色・形としてどうか)②香り(よいかおりかどうか)③かたさ(やわらかさ・歯ごたえはどうか)④舌ざわり(なめらかか、ざらざらしていないか)⑤味(甘さ・しょっぱさ、薄い、濃い、ちょうどよい)と目指すべき基準が示されていました。担任、隣のクラスの担任、学年所属の先生の3人に加えて他に選んだ先生1名、というのも、子どもたちが見比べるときのわかりやすさにつながっています。団子とたれの両方の評価となりますが、1回目はどちらもまだまだでした。<団子は上新粉を水またはぬるま湯でこねるけど、ここで水の量にちがいが。次に蒸す時間、どのくらい蒸したらよいのか。蒸し上がって食べてみて「ん?ざらざら・・・」という班も。ゆでたり、水につけたり、どの方法がいいのか、それとも蒸す時間や二度蒸しか?そこから「つく」。すりこ木か手か、どのくらいつくのか?団子の成型はどうしたらよいのか?みたらしはまず分量。こがした班、あんこみたいになっちゃった班、少なかった班、どうしたらいいか?みんなで作ってみて初めて見えてきたことがたくさんあったね。>(学級通信No.53)評価を見て自分たちの団子づくりをしっかり振り返り、2回目に向けて自分自身の課題を探っています。そのためにも各班で・時間・やったこと・気づいたこと、メモを記録表に記入しているというのがポイントとなります。さらに全部の班の評価を載せた学級通信を通じて、記録表と振り返りの感想を交流することで自分たちの課題と向き合うことになりました。

2年前、東田先生の「羊羹」の実践でも感じたことですが、「作る」ことに子どもたちが真剣に向き合うことができるかどうかは、この1回目の試作の時、やったことを振り返り次に生かすことができるための取り組みをきちんと提示しているかどうかにかかっているのだと思います。子どもたちの振り返りの感想には「先生たちの評価が厳しすぎる」と嘆く声もありますが、「蒸した時間がよくわからなかった。次は蒸す時間を長くしたり二回に分けたりしたいと思った。」「水が少し多すぎた。みたらしに片栗粉を入れすぎた。」と次回はどうするかを具体的に考えている内容もありました。

2回目は運動会をはさんで約1か月後。評価項目、採点する先生は1回目と同じで、課題になっていた「粉をこねたのは水かお湯か?」「蒸しは何分か?」「生地はついたか?」「生地をゆでたか?」「生地を水に何分さらした?」「何グラムで何個のだんご?」の6項目も、採点結果といっしょに一覧表にして示されました。クラスの中でこの一覧表を見ながら考えあったのでしょう、学級通信では各班の様子と気づいたことが書かれています。

1班→何回かに分けてもっとこうした方がいいと確かめながら作っていた。一発で大量に成功させることを次に考えてほしい。片付けも計画的。みたらしもうまくできた。  2班→Sくんがお休みで手が足りず大変だった。つくのをよくがんばっていたが、つきすぎかな?生地が固くなってしまった。1つずつの団子も小さすぎたかもしれない。  3班→ゆでただけなので上新粉の団子としては物足りない。形はとてもきれいだった。できたのが早かったのに片付けでもめた。ふきんは12枚、忘れないこと。ぬらしすぎないこと。  4班→みたらしがな~。Hさんのおしょうゆ、おいしいんだけど、みたらしとしてどうか?団子も前回の方がおいしかった。男女分業制。ここも蒸しが足りなかったのでは?  5班→みたらしを1回失敗して完全に作り直した。団子が大きすぎて1個でおなかいっぱい。のこりを食べきれず。水につけっぱなしで、どんどんまずくなり、さらに食べられず・・・。困った。持ち帰り容器があれば・・・。  6班→Tさんがお休みで大変だった。作業としては早かったがかんじんの団子がおいしくない。つけばよかったね~。蒸しが足りないのでは?> そして次回に向けて<はっきりいってあまりおいしくない団子が多かったのはなぜか? ①蒸してないのはまずだめだな。2回目なのに・・・。 ②必ずしもつかなくてもよいが、つく、こねる、たたく、などなんらかの生地への働きかけがいる。これもやっぱりやらないとダメ。 ③ゆでるのはあまり必要ではない。 ④水にさらすのも必要。でもさらしすぎはまずくなることがわかった。 ⑤大きさは1班だけナゾなのだが、5班はでかすぎたことははっきりしているので、100g1012個くらいをめざすといいのではないかな?>(学級通信No.63)子どもたちそれぞれの振り返りには、次はどうするということが書かれています。

3回目。新しい班で行います。担任からは<「やるべきことをやり、やってはならないことをしない」ことが必要だが、そこが見えているか?手順表が「ざつ」だな。大丈夫かな~?・・・・当たり前だが蒸すためのお湯をまずわかす。さらしたらぬめりを取るためにもむ。焼く時のポイントなど。もう一度班ごとに確認してほしい。>と学級通信で呼びかけています。

班で共同作業をするときにはていねいな手順の確認が必要です。自分はそのつもりだったことが、相手はそうではなかった、ということでの失敗がしばしば起こります。だから手順表に丁寧に書き込むことが必要で、振り返りのためには細かい記録が役に立つのです。

3回目は粉の量が多くなったこともあり、前回の課題に加えて「上新粉と水かお湯の量」「1回でできた団子の量」「みたらしは何回作ったか」「みたらしの量はちょうどよかったか?」「合計何個の団子ができたか?」が入りました。班ごとにみんなで細かく振り返りました。<どの班も団子づくり自体はだいぶ慣れてきて、よい団子になってきた。しかし、みたらしを失敗する班が出て、固くなったりまずかったり、作り直しになった。失敗した分は捨てざるを得ず、もったいない。団子自体も柔らかさはだいぶでてきたけれど、まだざらざらの班もある。そこをどうするか?>(学級通信No.67

試作と並行して団子の食べ比べを行っています。ご家庭に協力していただき、いろいろなお店の団子を差し入れていただきました。お店の団子も自分たちの試作と同じ評価項目で各自点数をつけ、コメントも添えていきます。1本の値段、原材料、買いに行ったときお店で聞いたことなどは教室で共有しています。新宿の追分だんご本舗さんは「温かいうちに水分量を見ながらふかした後ついている。でも固くなるからつきすぎはダメ」とのこと。中には「30種の中から粉を選ぶがどこのお米の粉かは企業秘密」「みたらしのとろみをつけるものはヒミツ」という答えも。

4回目の試作はお互いの団子を食べてみる、ということで37個は作る、ということにし、一人ずつが自分の班も含めて各班の団子を評価しました。他の班の団子との「ちがい」が見えてきます。これまでに先生たちの評価、コメントを受けたときのように、子どもたちも一人一人が細かいコメントを書いています。自分たちも作って6つの班の団子を食べ比べてこその内容です。25点満点で評価した子どもたちの点数の平均点と、学年の3人の先生たちの点数を合わせて100点満点中75点以上をとった班が3つありましたが、合格点は80点なので、<まだ団子もみたらしも完ぺきとはいいがたいんじゃないかな? 出店許可の60点ラインはどの班も超えることができているので団子自体は進歩している。しかし「うまい」と言われる団子を本番で失敗せずに作るには何が必要か、もう少し考えてみてほしいし、調べてみてほしい。>(学級通信No.70)といちょうまつりでの出店を見越した担任の要求は高いです。今回の振り返りは班で「よかったところ」「うまくいかなかったところ、ダメだったところ」「次回はどうしていきたいか?」を話し合ってまとめました。

5回目。これまではクラスでみたらし団子を追求してきましたが、いちょうまつりではもう1種類売ることもいいことにし、5回目の試作では2種類作った班が3つありました。採点結果を載せた学級通信のタイトルは「審査する先生がコメントしないほどの団子5回目の試作」とあります。<テキパキと作業を進めていて、ほぼケンカもなく終わっていたと思う。みたらしでは90点台が3つの班も出て、これはもうお店で売ってよいレベルまで来ていると感じた。新しいメニューに挑戦した班はやはりまだ初めてのこともあり、あと一歩ということが見えたね。>(学級通信No.75)ここでも各班の出来具合についてていねいな振り返りがされ、3日後に予定されている6回目の試作に向けて子どもたちの感想も真剣そのものです。

6回目はいちょうまつり本番を想定して出品締め切り時刻が決められました。ついにすべての班が90点以上!本番では5年生両クラスともに食の店を出すので、隣のクラスの買い物をしている時間はないだろう、と、最後の試作の団子を51組の人たちに食べてもらい、一人一人からコメントをもらいました。中には、見ため、味、食感、香り、そのものらしいか、など1組の駄菓子で評価項目としてきた項目に分けて細かくコメントしてくれた人も数名いますし、コメントをものすごくたくさん書いている人たち(縮小して掲載している学級通信では文字は読めないほど)もいて、テーマは違っても“ほんもの”を追求してきたからこその向き合い方に圧倒されました。

本番のいちょうまつりに向けて、何回も書いてきた手順表はさらに細かく書き込まれ、学級通信には当日の動き、開店した後にやること、片付け方などが書かれています。“失敗が許されない”本番を前に緊張していたことでしょう。例年とちがって、その場で食べてもらうことができないため、すべての団子を1個ずつパックに詰めて売りました。お客さんに手渡した「パンフレット」にはメンバーの名前とともにこだわったことが書かれ、感想を書いて届けてもらうようになっています。今年のお客さんは先生たち以外はすべて子どもたちでしたが、低学年の子どもたちからも次々と感想が届きました。

2学期末、グループ研究に向け、10のグループができました。手紙を書いたり、でかけてインタビューしたり、それぞれ計画を立てて始めました。担任からは、<冬休みに活動してもいいですが、無理しなくていいです。1月に時間を取ります。>と呼びかけています。グループ活動を進める前に、和菓子と団子に詳しいプロの方に来ていただいてお話をしていただきたいという思いで担任が「全国和菓子協会」に連絡しました。すると、専務理事の藪さんが来てくださって、教室でお話をしてくださいました。団子のルーツ、由来、歴史からいろいろな「企業秘密」までこっそり教えてくださったそうです。

こうしてグループ研究のテーマをイメージしながら冬休みを迎え、3学期初めには各地の団子屋さんに質問などを手紙にして出したものに返事が届き始めました。質問は、「いつからお店をやっていますか? 昔と比べて売れていますか? 他のお店と比べてこだわっているところ、違うところはありますか? コロナの時期で売り上げはどうなりましたか? これから団子はどうなっていくと思いますか? 団子の未来のために何をしたらいいと思いますか?」というような内容でした。お返事を送ってくださったお店、会社の方はみなさんとても丁寧に答えてくださいました。お返事が届くたびに学級通信で紹介し、クラス全体で共有します。「団子の粉を調べる会」が手紙を送った群馬製粉さんからは上新粉、だんご粉、パンケーキ用米粉も送ってくださいました。このグループは日本製粉、日清製粉の会社にも送りましたが、どちらも小麦粉の工場で米粉は作っていないそうです。それでも日清製粉さんはていねいなお返事をくださいました。全日本菓子工業組合に手紙を送ったグループには、「菓子製造業の組合であるためこのようなサービスはしておりません。」としながらも「菓子工業新聞」の記事を送ってくださったそうで、<送ってくださった羽二重団子の記事はめっちゃおもしろい!これは「業界新聞」というやつなので、ふつうは私たちが見ることはできないものなので貴重です。>と学級通信で紹介しています。奈良の虎屋さんという団子屋さんからは85歳になるご主人から手書きの丁寧なお返事を頂きました。

次々と届くお返事、インタビューに出かけて行って答えていただいた内容、どれも“ほんもの”をめざして団子作りをしてきた子どもたちにとってはプロの声として聞き逃すことのできない貴重なものばかりです。担任の東田先生は、<大事なことは聞いてきたこと、お返事頂いたことから、自分たちはどう考えるのか!?ということです。>(学級通信No.100)とまとめに向けて呼びかけました。

今年も、5年生の総合学習「食」の取り組みから、学びに向かう子どもたちの姿、それを支える教師の役割について、私自身が学ぶことがたくさんありました。

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