入学式 式辞

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大石さんのことは、このブログでもご報告した通りですが、改めて新入生、在校生、保護者に知ってもらいたい、と入学式の式辞に取りあげました。核のことについては、福島原発事故と関わることなど、もっと色々語りたいことがありますが、時間の制約で話せませんでした。
中学生の力ということで話したことは、長年の教師生活の中で本当に実感することで、この時期の生徒の様々なことに対するまっすぐな気持ちは、かけがえのないものだと思っています。以下が当日話した式辞です。

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新入生のみなさん、入学おめでとう。ようこそ和光中学校へ。
学年の仲間、上級生、そして私たち教職員との新しい旅への出発です。
保護者のみなさま、お子さまのご入学おめでとうございます。
今日の日を心待ちにしていたことと存じます。お子さんが心身ともに大きく成長していく、新しい段階の始まりです。
どうか、温かく見守ってもらえれば、と思います。
1年前の4月、和光学園は休校状態でした。
「いついつに入学式をやります」と予定しても、何度も延期せざるを得ませんでした。
今日こうして入学式を行っていますが、昨年はクラスごとでそれも6月でした。
4月に新入生全体が集まって、オンラインという形ですが2・3学年も参加し、全校揃って行えること、それ自体が嬉しいことだと思い
ます。

さて、今日は、「中学生の力」ということで話をしたいと思います。
まず、これを見てください。

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これは、和光中学校に贈られたものですが、この船はどんな船で、なぜ和光にあるのでしょうか?

まず、船の名前は「第五福竜丸」と言います。保護者の中には、あっと思われた方がいると思いますが、新入生のみなさんのほとんどは、初めて聞く名前でしょうね。
1954年3月1日、南太平洋のビキニ環礁というところで、放射性物質を大量に浴びた船です。
アメリカがそこで核兵器の実験をした結果、大量に放射性物質がまき散らされました。

核兵器と言えば、広島・長崎にアメリカが落とした原爆のことを思い出す人もいるでしょう。
放射性物質を多量に浴びると、ガンになりやすいことはよく知られていますね。
原爆が恐ろしいのは、爆風や灼熱を何とか逃れてもいつ放射線の影響が出て発病するか、分からないからです。
原爆が長崎や広島に落とされたのは、1945年8月。その後、巨大な破壊力を持つ兵器を手にいれるために、いくつかの大国で核兵器の開発が進められました。
実際の影響を見るために、地上で爆発させる実験も行われました。

その一つがビキニ環礁で行われたのです。
第五福竜丸はマグロを取る船で、乗組員たちが乗っていました。
彼らは放射能をおびた死の灰、サンゴ礁のかけらだったのですが、を浴びました。
乗組員たちはその後放射性物質の影響で病いに苦しみました。
亡くなられる方もいたのです。

この出来事は、当時の日本に大きな影響を与えました。
先ほど、日本は、米国により広島・長崎に原爆を落とされたと言いましたが、1952年4月までは、米国の強い影響下にありましたから、原爆の被害のことは広く報じられることはなかったのです。
1954年3月1日に第五福竜丸におきた事件は、ビキニ事件と呼ばれるようになりましたが、この事件をきかっけに、原爆の被害が知られるようになり、核兵器廃止を求める大規模な署名活動が行われるまでになったのです。

さて、時は流れて1983年、今の総合学習の発表に似ていますが、当時はクラスでテーマを決め何かについて調べ、秋の文化祭で発表するということが行われていました。
平和について調べたいというそのクラスの中の1グループがビキニ事件について調べることになりました。
そして、中学生が、東京に来ていた、とある乗組員に連絡を取りました。
その方のお名前は大石又七さんと言います。
大石さんはビキニ事件の後闘病生活を送っていましたが、退院後は被曝者であることを伏せて、ビキニ事件のことを忘れたい、と思っていたそうです。
ご自身の子どもが死産で生まれたこともあり、どうしても放射能の影響のことが頭から離れない。
だから、ご自分のことを人前で話すことはなかったのです。大石さんの言葉をお借りするならば、生徒がどうしても話を聞きたいと食い下がってくるので、「しょうがないな」ということで会って話をした。
会いに来た生徒の中に、全盲の生徒がいました。
その生徒が触ることができれば、第五福竜丸のことがよく分かるだろう、と模型船を作成し、和光中に寄贈してくださいました。
ここにある船はその船なのです。

大石さんは、その後、この和光中の生徒たちとの関わりをきっかけに、各地で自分の経験や思いを語るようになりました。
ビキニ事件と核兵器のことを考えて欲しいと世の中に訴えられました。
和光中にもその後、何度も足を運んでくださいました。

今日、第五福竜丸の話をしたのは、大石又七さんがこの3月に亡くなられたこともあり、和光中と大石さんの特別なつながりを知ってもらいたいと思ったからです。
そして、大石さんが広く話をするようになったきっかけが中学生の素朴な知りたいという気持ち・疑問だったことに注意してほしいと思います。
大人には話したくないけれど、中学生や高校生には話しても良い、ということがあります。
みなさんの真っすぐな気持ちが当事者の気持ちを動かすのです。
最初に「中学生の力」と言ったのはこのことです。
皆さんには、自分でも気づかないようなすごい力があります。自分の知りたいという気持ちを大切に、疑問を大切にしながらこれからの3年間学んで欲しいと思います。

新入生の皆さん、皆さんの和光中の生活は今日がスタートです。
和光は人と人のつながりを大切にする学校です。
コロナウイルスの影響がある中困難もありますが、同級生や上級生と様々な形で交流しながら、自分自身を成長させていって欲しいと願っています。

2021年4月12日
和光中学校長 橋本 暁

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