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校長室から

選択講座A1「海洋研究」

 05年度に高校2年生向け選択講座A2を担当することになった。大学時代の専攻および17年間の水産高校教員経験を生かし、「海洋研究」という講座を開くことにした。和光に勤めてからも、かつての習い性というのか、授業に生かせそうな海洋関係、水産業関係のテレビ番組があるとつい録画してしまう。そうしたビデオが20本近くあったことも一つの理由かもしれない。

 「海洋研究」の1年間のスタートは、「私の勤めていた焼尻高校のある焼尻島は夏も水が涸れない。ところが、隣の天売島は水が涸れ、しょっちゅう断水する。なぜか?」の問いから始める。生徒は「焼尻島には森があるけれど、天売島にはないのでは」と正解を言い当てる。そこから、「なぜ、森があると水が涸れないのか?」を、森の斜面に降った雨と草地の斜面に降った雨とを比較しながら考えさせる。そして、いくつもの「なぜ?」「どうして?」「本当か?」を連続させる授業にしていこうとまとめる。
次週にはビデオを見せたあとで、「森が荒れると沿岸の海藻が育たなくなり、魚が獲れなくなる。なぜか?」の問いから始める。

 その後は、岩波ジュニア新書『海と人間』をテキストにしながら、必要なビデオを見せつつ授業を進めていく。しかし、近くに海がないという地理的条件は克服しがたい。「本当か?」を確かめる観察や実験・実習はきわめて限定される。

 06年度から研究旅行を伴うA1に移ることになった。A1にはフィールドワークとしての研究旅行がある。ダイビングスクールとの何回もの協議を経て、最終的には次のような計画を立てた。スクーバダイビングのライセンスを取得できるという実利も含みつつ、「本当か?」を確かめる場にしたかった。

 1日目:ダイビング器材の取り扱い学習・プール実習・理論学習
 2日目:海洋実習ダイブ2本・定置網漁業者の話・理論学習
 3日目:魚市場見学・海洋実習ダイブ2本・理論学習・学科テスト
 4日目:城ヶ崎海岸散策路植生観察・大室山見学

 06年度の研究旅行は、ほぼこの計画通りに行うことができた。いくつもの「本当か?」を確かめることができた。「スクーバダイビングをおぼえると人生観が変わる」と言う人もいるほどだが、生徒も1ダイブを終えるたびに「魚になった気分」「昨日まで悩んでいたことが小さく思えるようになった」などと言い合っていた。生徒の感想文には次のようなことが多く書かれていた。

 水の中で息ができて不思議な感覚だった。ゆったりしていることが心地良かった。潜る本数が増えるにつれて魚の数も増えていった、というか見る余裕ができた。

 海の中から見る太陽、自分が出す息、そして何より魚のキレイさにびっくりした。いつのまにか僕は海の中に住みたいと思うくらいダイビング好きになっていた。

 海の中はたくさんの生き物がいて、外から見る海とは全然違っていた。陸と海中では世界が違っていたように感じた。A1の授業で学んだとおり、山と海はいろいろなところでつながって密接に関係しているのだと思った。

 研究旅行はインストラクターとの出会いでもあった。経歴や職業選択の経緯やいろいろなことを聞いていた。海から環境問題を考える視点を与えてもらった生徒も多い。

 山や木や海を見て、自然はお互いを作りあって生きているのに、人間は破壊するだけだなと思った。でも、インストラクターの人たちみたいに真剣に考えている人もいる。僕もこれからそういう人になろうと思った。

 研究旅行での体験は、その後の授業に大いに生かすことができた。生徒たちは、海の中を想像しながら私の質問に答えてくれるようになっただけでなく、以前よりはるかに多くの「なぜ?」「どうして?」「本当か?」を発するようになった。

-学園報2007年秋季号より-

日時: 2008年01月04日 17:23

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