第67回和光高校卒業式祝辞

サイト管理者 校長ブログ

本日ここに、234名の卒業生を送り出します。

卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。そして今日のこの日を特別な思いで迎えられた保護者の皆さん、ご家族の皆さん、心よりお祝い申し上げます。

君たちはこれからどんな世界に飛び立ってゆくのか。君たちがこれから活躍するこの社会はどのように変わっていくのか、人生の節目に皆さんと一緒に考えたいと思う。

私たちは日頃、何か分からないことや、興味があることをもっと知りたいと思う時、「グーグル先生」のお世話になることがある。キーワードをいくつか入力するだけで、たちどころに知りたい情報にアクセスできる便利なツールです。グーグル先生が教えてくれることは言葉の意味や出来事の解説だけにとどまりません。意見が対立しているような政治的な課題について、どのように考えたら良いのかまで教えてくれます。

昔のように、本屋や図書館で文献や資料を探す手間もかかりません。Wi-Fiとスマホさえあれば、いつでもどこでも世界中と繋がることが可能な社会です。スピードと効率を重視するネット社会では、時間をかけてじっくりと思考して自分の考えを温めるというようなことは無駄な時間であるかのように錯覚しがちです。

しかし一人の人間がどのように生きていくのか、その人の人格や思想を育てていくためには、十分な時間が必要です。その意味で君たちが生きていく社会は大きな落とし穴が口を開けているのだと、知るべきです。

大きな落とし穴はまだあります。グーグル先生に教えてもらって、分かったような気になっているだけの人はいないのだろうか?ネット上の誰のものか分からない他人の意見を、さも自分が考え抜いた意見かのように思い込んでいる人はいないだろうか?

ネット上にある情報の中には、世論誘導するために意図的に改ざんされたものや、巧妙に加工されたエセ情報が紛れ込んでいることはよく知られている。フェイクニュースを振りまいている側が、自分の都合の悪い情報をフェイクだとののしることが日常的に起きているのもネット社会の現実です。何が真実で何がフェイクなのか、とても見分けがつかない。人工知能AIさえもフェイク画像を見破れない時代に今我々は生きている。

考えることと対話の重要さについて、私が改めて気づかされた出来事が昨年、ありました。それは私が担当する基地問題研究のある生徒のレポートです。それを紹介します。このレポートは、先月の沖縄の県民投票で話題になったあの辺野古で、70歳を過ぎた和光の大先輩(河野さん)と出会った衝撃を、卒業生の富永理桜さん(3組)が語ったものです。沖縄での4日間はあっという間でとても内容の濃い時間でした。私がこの4日間でもっとも衝撃を受けたのはキャンプ・シュワブの前で伺った和光出身の河野さんが語っていた言葉です。

「和光流を捨ててはいけない。それには2つ理由がある。1つ、恥をかくことが人生なんだ。2つ、出る釘は打たれるけども、出過ぎた釘は人が避けて通る。出過ぎるまで身も心も勉強もしろ。これで僕は75歳の今日まで来たんだ。和光スピリッツは正しい。」

この言葉は人生にも、基地問題にも繋がるものがあると思いました。私たちは周りばかり見るのではなく今、目の前にある問題を直視し自分の意見を発信していかなくてはいけないのです。それができてこそ基地問題解決への糸口がみつかるのではないかと思います。また、河野さんはこのようなこともおっしゃっていました。

「戦争の反対概念は平和ではない。平和なら安倍首相も言ってる。トランプ大統領も言ってる。戦争の反対概念は対話である。和光が教えている自分の意見を人の前で言いなさいということは他人の意見も聞けということだ。対話を成り立たせるということだ。」

この言葉は私の心にとても響きました。そして多くの人に伝えたいと思いました。研究旅行に行く前私たちは新聞記事、テレビ、ネットニュースなど報道から情報を得ていました。けれど現地の人から直接話を聞くと新しく知ることがたくさんありました。特に辺野古新基地建設については順調に建設が進んでいるとの報道がされていますが、実際は計画とは違った作られ方になっているうえ建設も進んでいないと聞いた時は本当に驚きました。基地問題は東京で勉強するのと沖縄で勉強するのでは得るものが違うことを痛感しました。少し引用が長くなりましたが、この文章は社会科教師としての私が何を大切にして授業を行うべきかを教えてくれたという点でも、富永さんに感謝しています。

和光の大先輩である河野さんに富永さんのこの文書を送ったところ、次のような返信が届きました。

★富永さんの意見は、感動的でした。ぼくの伝えたいことを正確に理解してくれたからです。君は「対話」を意識的に実践する人と感じました。対立する人や国があっても、「あいつとは口もききたくない」とか「あの国は懲らしめなければ善くならない」と考えることは、憎しみを増幅するばかりで、喧嘩や戦争への道になることを、とっくに知っていたはずです。

★君たちがインタビューしていたように、自分の意見と違うかもしれない人の意見に耳を傾け、理解すること。君たちからそれを学んで、軍事基地を「強化拡充すべきだ」という意見にぼくも耳を傾けるようにします。自分と違うのは、どこから?なぜ?――と理解することは、お互いに必要なことだからです。

河野さんは返信の中で、自分も自分とは違う意見に「耳を傾け、理解するようにします」と18歳の富永さんに約束しています。70歳を過ぎてもこういう柔軟な生き方ができる方に私も憧れてしまいました。

最後に個人的なことですが、卒業生の皆さんにお礼を言いたい。

教師は生徒からたくさんエネルギーをもらって生きている、とても恵まれた職業だということです。教師を育て成長させてくれるのは、生徒たちなんだということを実感しています。そして次に頭をよぎったことは、「自分は生徒からもらったエネルギーの何分の一を返すことができているんだろう?」かと。私もこの3月定年を迎え、皆さんと一緒に和光高校を卒業します。和光での40年間にもおよぶ教師生活、生徒の皆さんへの感謝しかありません。

皆さんのこれからの活躍に期待します。卒業、おめでとう!

和光高等学校 学校長 松山尚寿

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