校長式辞

第69回 和光高等学校卒業式 式辞

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何とか、今年も卒業式を行うことができました。在校生の送る言葉卒業生の言葉もとても印象深いもので、今年のコロナ禍の経験を踏まえながら、和光高校が何を大事にしているか、を示すものでした。

式辞の中で、東日本大震災について触れたくだりがあり、「(原発事故以外にも)語るべきことはありますが」と私は言っていますが、そこで考えていたことは「親しい人の喪失のことをどう考えるのか」「被災者差別のことをどう考えたらよいのか」といったことでした。コロナ禍の現在にもつながる問題ですが、時間の関係で省かざるをえませんでした。今年の卒業生の一人に、福島県の中学校出身の生徒がいるのですが、式後に私のところに来て「震災のこと触れてくれてうれしかった」と言ってくれ、十分ではなくても取り上げてよかったな、と思いました。

原発事故に関する話の多くは、小出裕章さんの『原発事故は終わっていない』に依っています。コンパクトにまとめられた読みやすい本ですので、是非多くの方に読んでいただきたいと思っています。式辞では、お名前を出さなかったので、この場で紹介しておきます。

 

2020年度 和光高校卒業式 式辞

卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。そして、卒業生を今日まで見守ってきた保護者の皆さん、ご家族の皆さん、心よりお祝い申し上げます。

1年前の今日も、和光高校の卒業式でしたが、ここにいる皆さんは先輩の卒業式に参加できず残念な思いをした人もいたと思います。それから、1年たっても、新型コロナウイルス感染症の影響が続いています。歴史上の大きな出来事の中を私たちは生きているのです。

時間を少しさかのぼらせましょう。10年前の3月12日、その日も和光高校は卒業式を行う予定でした。しかし、その日の卒業式は行われなかった。何故だか分かりますね。前日の3月11日、東日本大震災が起きたからです。みなさんの多くは、その時はまだ8歳。どの程度のことを覚えているでしょうか。 10年前の今日、3月12日の朝、この体育館の隣の第2体育館に交通機関がマヒして帰宅できなかった生徒たちがまだ残っていました。11日から12日にかけて泊まり込んでいたのです。その後、ガソリンが不足したり、トイレットペーパーの買い占めという事態がありました。電気が不足している、ということで、地域ごとに順番に停電させる計画停電ということも行われました。それでも、関東地方は東北に比べればまだ被害の度合いは少なかった。和光でも、4月の始業式は通常通り行うことができたのです。そして、現在、関東地方では震災の痕跡はほとんど見られない。しかし、岩手、宮城、福島の三県には災害の爪痕が強く残っています。2年の選択で、「農と地域」を取った人は宮城県の荒浜地区に行った時のことを覚えていることでしょう。私も6年ぐらい前に荒浜の隣の、閖上(ゆりあげ)地区というところを訪ねた時、津波で建物が流されひたすら空き地が広がっている様子を見て呆然としたことを思い出します。

先ほどあげた、岩手・宮城・福島の三県の人たちで、震災後住み慣れた土地を離れ避難した人たちがいました。現在は避難生活が終わり元の土地に戻っていった人たちもいるのですが、一つの県だけ突出してまだ避難している人がいるところがあります。どこだか分かりますか? 福島県ですね。福島第一原発が事故を起こし、大量の放射性物質がまき散らされた結果、現在に至っても人が住めない地域があるのです。原発の所在地の双葉町は現在も全町避難が続いています。これは「原子力事故緊急事態宣言」に基づいて行われていることです。「新型コロナウイルス緊急事態宣言」のことは、今毎日のように話題になりますが、日本にはもう一つの緊急事態宣言がずっと続いているわけです。

原発事故は今も全く収束していません。事故を起こした原発の核燃料が発熱してまわりの金属をも溶かしその後固まっている、これを燃料デブリというのですが強烈な放射線と熱を出している。人間が近づいたら生きていられないというレベルのようです。そして、発熱により温度上昇が起きて、また核反応が起きないように水をかけて冷やしています。その結果、デブリに触れることにより水が放射能を持つことになる。これが汚染水で、この処理に困っている。デブリを取り出し廃炉作業が終わるには、一番楽観的な見通しでも30年から40年かかるとされています。そもそも、デブリの取り出しなど無理で全く見通しが立たないとしている研究者もいます。

廃炉に関わっては別な側面からの問題もあります。それは、廃炉作業に携わっている労働者についてです。原発の廃炉作業の現場には多量の放射性物質があります。大量の放射線を浴びると健康を害しますから、労働者が1日および年間で浴びてよい放射線の量は法律で定められています。下請けの労働者が放射線の限度量が来ると働けなくなって首になることを恐れて、放射線の測定器の上に、鉛のカバーで覆いをして誤魔化して働いているケースがあるそうです。そういう人の中で白血病になる人もいたそうです。廃炉作業自体が新たな放射線被ばく問題を生んでいる面があります。そして、原発は事故の無い状態、平時でも、そこで働く人には放射線の問題がつきまといます。そうだとすると、原子力発電とは誰かの健康を危険にさらして電気を作り出すシステムなのかもしれません。通常運転でも出てくる放射性廃棄物、核のゴミですね、これの処理も全く見通しがない。結局、過疎地に金の力で押し付けるような動きも起きています。

他にも震災や原発事故について語るべきことはありますが、時間に限りがありますから、ここまでとします。

(さらに…)

入学式 校長式辞

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第71回 和光高等学校 入学式 式辞

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新入生のみなさん、ようこそ和光高等学校へ。高校への入学は決まっていても、1回も通学できてないのだから、自分は本当に高校生になったのだろうか、と思っていた人もいるでしょう。ですから、ここでみなさんに改めてお伝えしたい。新入生のみなさん、入学おめでとう。私たちはみなさんのことを心から歓迎します。

休校期間中、なかなかみなさんに和光高校としてのメッセージを伝えることができませんでした。最初のうちは、郵送やホームページを通じて、という形を取らざるを得ませんでした。そのような形の一つとして、校長メッセージを4月に動画配信しました。見ていてくれると嬉しいのですが、その中で、みなさんに考えて欲しいと投げかけた問いがあります。それはこんなことでした。「米国のトランプ大統領は、『自分は戦時下の大統領だ』と宣言し、『コロナウィルスとの闘いは戦争だ』と言いました。しかし、私はこの認識は明確な誤りだと思っています。みなさんに直接会えた時に、私の考えは述べたいと思っています」と伝え、みなさんにトランプ発言について考えることを呼びかけました。今、私なりの考えを皆さんに伝えるときでしょう。

戦争というものは基本的に自国の外に敵がいる、ということを前提にするという点で、大きく違うということです。コロナウィルス感染症は世界的な、グローバルなものです。ですから、お互いの国の情報を交換して対処しなければなりません。具体的に言えば、ウィルスはどんな特徴を持っているのか、どんな薬が効くのかということでしょう。国際的に助け合わないと病気に対抗できません。マスク、検査試薬など医療用品をお互い融通しあうことも病気の広がりを防ぐために必要です。他国を敵とするのではなく、協力しなければならないのです。しかし、戦争に似ているところもあります。戦争中には、国内的な対立が棚上げにされ、団結が呼びかけられるのは歴史が教えてくれるところです。非常時だということで様々な我慢が必要になることも似ています。トランプ大統領は、国内的団結を自分への支持率アップにつなげるために、そして、コロナを予防するのに国民に我慢を強いることを正当化するために「戦争だ」と言ったのでしょう。

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